＜ベトナム芸能界珍道中＞
愉快・痛快・ウキウキ★SAKAI
第4話：師匠ゴックソン流と、押し寄せるサカナの大群

　ところで、俺はいつも青色Ｔシャツに黄色のジャージ、青いスニーカーでキメていた。ところが食事後、師匠に、

「SAKAI、キミ、オンナ」

と言われ、師匠が愛用している、プレスリーのようなワイルドな衣装を何着か渡された。これから毎日それを着ろと。

「こんなダサイ服、絶対ムリ」

と思うも、ここで逆らえばスターへの道は閉ざされると考えた俺は、策略的な笑顔を作り、

「この服カッコイイですね」

と師匠のセンスをベタ褒め。

　師匠と一緒にいると、お世辞のレベルだけは、どんどん上がる気がする。

　昼過ぎ、師匠がいつもトレーニングをしているというジムに連れて行かれた。

　師匠が筋トレに励んでいる間、ジムに流れるBGMに合わせ、鏡に向かって延々と踊らされる俺。周囲の人間は、そんな俺を見てクスクス笑う。仕方ないが、これもレッスンのうちだ。怠けようものなら師匠の怒号。俺は躍起になって長い間踊りまくっていた。

「SAKAI。ボク、オナカヘッタ」

と師匠。今度はレストランに同行した。

　店に入った途端にお客が騒ぎはじめ、さっそく大きな鍋が用意された。俺もなんだかスター気分で心地良い。

　だが、そう思ったのも束の間、出てきたのは魚料理のフルコース…。俺は最高の作り笑顔で、地獄の夕食タイムを乗り切るしかなかった。

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（2007年3月号／2007年3月7日 水曜日 10:19 JST更新）