ヴァンフック村
本物の絹を求めて。
蚕が生み出す汚れなき純白の輝き。

　5世紀には既に中国へシルク製品を送っていたというベトナム。17世紀頃にもなると、日本の生糸市場でもベトナム製が3分の1を占めていたという。そんな伝統のシルク産業を、ハノイ近郊で行っている所がある。質の高い絹織物で有名なHa Tay（ハータイ）省ヴァンフック村。ハノイ市内より南西に約10キロのところにあり、村人の約9割がシルク織りに携わっているという。この地域の絹織物は、1000年以上の歴史があるといわれているが、この村もまた歴史の流れに翻弄され、織物産業自体が失われる危機もあった。

　しかしそうした中、村の伝統を守り続けてきた人がいる。それが代々シルク工場を営んでいるTrieu Van Mao（チェウ・ヴァン・マオ）さん。彼は伝統的なシルク柄を集める収集家としても有名で、忘れ去られたシルク布の文様を、25種類復元させた。老齢の女性を訪ねたり、寺院倉庫をあさったり、どこに残っているかわからない昔のシルク布を収集するのは、本当に骨が折れる作業と語る。

　現在彼の工房にある機織り機で一番古いものは、手と足で作業するという昔ながらのもの。その他、現代的な機織り機もあるが、枠組み等が全て木でできたもので、「ガタン、ガタン」と大きな音を立てて、キメ細かな布を織り上げている。

　彼のような人々がこの村の絹を守り続けたおかげで、今では再び50軒以上の織物工場が建ち並び、1000台以上の機織り機が大きな音を立てるようになった。通りには何十軒ものシルク屋が軒を連ね、美しいその光沢を、のんびりとした風景の中に輝かせている。

染め付け作業も見学できるぞ！
〜伝統工芸村を訪ねて〜

　ヴァンフック寺を右手に見て、奥に進んだ古い門の手前に、「NHUOM」と書かれた看板が目印の染付けの専門工房がある。染め付けを専門に扱う工房は、村にわずか3軒ほどだが、染付け、洗濯、乾燥と、それぞれが担当に別れ、全ての工程をこなしている。シルクの織りの後は、製品への次の段階である染め。目の前で行われる丁寧な手作業は、一見の価値あり。

　店名 HAI DANG染付工房
　住所 Khoi Doc Lap, Van Phuc, Ha Tay
　電話 (034) 821782

シルクにはどんな種類があるの？
〜伝統工芸村を訪ねて〜

　シルクと一口に言っても、その種類は多種多様。価格もまちまちなので、お好みの一枚をお選びあれ。

タクタ（TACTA）
いわゆるシルクタフタ。厚みあり、硬めのしっかりした張りが特徴。
約4万5000ドン（約320円）／m〜
ルア（LUA）
とにかく薄くて柔らかい。なめらかな風合い。
約2万5000ドン（約180円）／m〜
ライン・タム（LANH TAM）
シルク糸とラインという木からできた繊維を織り合わせた布地。
約2万5000ドン（約180円）／m〜
サタイン（SATANH）
いわゆるシルクサテン。光沢が強く、ルアより少し厚め。
約3万5000ドン（約250円）／m〜
ドゥイ・タム（DUI TAM）
細いシルク糸を何本か縒り合わせ、織り上げた布地。
約3万ドン（約210円）／m〜

ヴァンフックに新しいシルク街が。
〜伝統工芸村を訪ねて〜

　AM（アム）橋を渡った右手の川沿いに、新しくシルクショッピングロードが登場。150メートルほどの小道に約30軒ほどのシルク専門のお店が並び、ハノイ市内より安い値段でシルク商品を買うことができる。シルクの布地を買うなら「CAN CANH」ショップがお勧め。約100種類と豊富な在庫で迎えてくれる。

　店名 「CAN CANH」
　住所 Doan Ket Hamlet, Van Phuc, Ha Tay
　電話 （034）821982
　営業 8:00〜20:00

村全体がシルクで輝くお祭りへ！
〜伝統工芸村を訪ねて〜

　旧暦の1月13日（新暦2月21日）、ヴァンフック寺にて、村祭りが開催される。これは、シルクの生産を最初にヴァンフック村で始めたといわれる人物、La Tri Nga（ラー・ティ・ガー）を奉り、人々の先祖供養も兼ねるもの。村の人々はヴァンフックで作られたシルクを着て参加し、未婚者が貢物を担いで街を練り歩く。

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（2004年12月8日 9:53更新）