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ベトナムだんご兄弟

 日本語学校といえば今は立派な校舎を構えたところがあるが、15年前に私が教えていた学校はいろんな施設に教室を間借りしていて、学期ごとに「引っ越し」があった。
 学校が変われば周りの環境も変わる。それが住み始めて間もない私に、格好のベトナム観察の機会を与えてくれた。

 レヴァンシー(Le Van Si)通りの小学校を間借りしていたときは、いつも朝の登校時間になると、校門に木製のアタッシェケースを自転車の荷台に結わえてやってくるおじさんがいた。ケースを地面に置いてパカッと開けると、そこにはルーレットが回っていた。即席のルーレット賭場のご開帳である。客はもちろん、登校してくる小学生たちだ。地面にケースを置いてルーレットを回すと、安っぽい金紙に縁取られた矢印がカタカタと回転していく。その音も安っぽい。しかもインチキ臭いニオイがぷんぷん漂う。でもジャンクなものに魅せられてしまう子どもは、目を好奇心で溢れさせながらしゃがんでしまうのだ。「早く学校いけよ」と思っても無駄。そこへおじさんがこれまたインチキ臭い笑みを浮かべると、その笑顔に安心するのだろうか、最初は見ているだけの子どもがオズオズと金を賭けだす。賭け金は200ドン(約2円)とか500ドン(約5円)とか、そんなもんだったと思う。日本で学校の前でこんなことやっていたらすぐに先生が飛んでくるだろうし、だいたい博打に興味を示す小学生がいるとも思えない。
 しかし読者の皆様もご存じの通り、賭け事好きがもはやDNAレベルで書き込まれているとしか思えないベトナム人の小学生は、乗るんである。乗って、しかもやっぱり、負けてしまうんである。賭けたルーレットの矢が外れた途端、子どもは「フンギャー」と泣き、さっきまで笑っていたはずのおじさんがすっと無表情になって子どもの手から、ボロボロの200ドン紙幣を「ふんっ」と奪い取っていった。私はこの地べたルーレット即席賭場はベトナム独自のものだと思っていたのだが、西原理恵子さんが古里・高知の想い出を書いた漫画でも出ていたので、日本でやっていた地域があるのだろう。

 私が賭場を利用するわけにもいかないので(昼間の時間帯にBAR「アポカリプス・ナウ」の前で大人版即席ルーレット賭場が開かれていたので、写真を撮ろうとしたら怖そうな兄さんからすげえ怒られた)、学校前に出ていた屋台の団子屋に通っていた。団子屋は20歳前後くらいの男の兄弟ふたりが、その場で団子を丸めて揚げる鍋とガスコンロだけの店だった。兄弟は夕方になるとどこかから小さな屋台を押しながら現れる。屋台を置くと、弟がスルスルっと電信柱を登っていく。そして上で何か細工していたと思ったら、兄貴が待つ屋台の蛍光灯がポッと灯った。盗電である。弟は盗電と営業を担当していて、兄貴は団子の調理に専念していた。この兄貴はなかなかの職人気質で、常連客の私(ほぼ毎日通っていた)が注文に来てもニコリともせず、黙って団子につめるアンが入ったボールを2種類見せた。肉か甘いアンコか。私も無言で甘いのを指さすと、兄貴は黙って頷いて団子を揚げ、出来ると弟が愛想笑いを浮かべながら「××ドンでーす」と渡してくれた。一学期中通ったのだが、私は兄貴が喋ったところをひとことも聞いたことがない。なかなかいいコンビだったと思う。

 先生を辞めて帰国し、今度は旅行者としてベトナムに来るようになって、私は学校巡りをした。生徒さんたちと通った学校前の喫茶店などはまだ営業していたのだが、さっきのルーレット賭場と同じく、団子兄弟は一度も見かけなくなった。
 やっぱりいまどきのサイゴンで「盗電」なんて、無理だよなあ。
 とか思っていたら、ベトナムの通信用海底ケーブルが盗まれた、という記事を読んだ。盗電ではないけれど、公共のものをちょろまかすスケールがでかくなっているではないか。その記事を読んだとき、なぜか私は海中をコンセントを横くわえにして平泳ぎで潜っていくあの弟を想像した。弟がコンセントをつなぐ。波にきらめく数千キロの電源コード、その先で、むっつりした顔で屋台で待つ兄貴の手元が、蛍光灯でポッと照らされるのだ

写真・文/神田憲行 かんだのりゆき
 ノンフィクションライター。黒田ジャーナルを経て独立。ベトナムでの日本語教師時代を綴った『ハノイの純情、サイゴンの夢』(講談社)ほか、アジア・ベトナムに関する著書多数。ベトナムと15年に渡り関わり続けてきた氏の集大成として2007年12月、『ベトナム・ストーリーズ』(河出書房新社)を刊行。

題字/黒田茂樹(楽書家・写真家)
「古民家ギャラリー いい樹なもんだ」主宰。http://www.geocities.jp/g_iikinamonda

(2008年2月号 | 2008年2月20日 水曜日 10:35 JST更新)

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