帰りな！ 子供に用はねえぜ！（北○謙三 風に）
　こんにちは、29屋さん。突然ですが実は今、数年ぶりに恋をしています。というより実は片思いなのです。相手は私より５歳年上の飲み仲間（日本人♂独身）で、周囲の人望も厚いナイスガイ。それとなくアプローチはしてみたのですが、まるで相手にされません。自分で言うのもなんですけど、私は学生のときや日本でのＯＬ時代にはそれなりにモテていた方だと思うのですが、彼にはおチビちゃん呼ばわりされて対等の女性として扱ってもらえないのです。きっと何かが足りないのだろうとは思うのですが、その何かがわからず、切ない思いをしております。どうすればよいでしょうか。

PN：ジュリー・オンドリャース（24＋α歳　♀　独身：ベトナム在住通算４年目）

若葉には若葉の、花には花の、実には実の、枯木には枯木の旬がある
　俳優を志す人間にとって必読の書の中に、能楽の祖・世阿弥が著した「風姿花伝（通称:花伝書）」という本があります。役者さんだけでなく、人間というのは自意識のカタマリ＝いかに人に見られているかということが気になって仕方がないもので、如何にしてそれを自覚してコントロールしていくかということを、＜時分の花（じぶんのはな）＞という段落で役者の年齢を引き合いに出して説明しています。非常に乱暴にまとめると、演技者＝自分というものが子役・若手・壮年・老年とそれぞれの段階において観客＝他人から求められる要素は違うものなので、それを自覚してそのように振舞えということです。かつて一世を風靡した子役の殆どが、なぜ大成しないか。アイドル歌手の殆どが、なぜ十年後まで生き残れないか。答えは簡単で、その年齢期にしかない＜華＞が去ってしまったのに、その芸風で通そうとするからです。貴女の場合、10代から20代前半のころの＜女の子キャラ＞から、20代後半以降の＜女の人キャラ＞への脱皮が求められているはずなので、そのへんのニーズに敏感になりましょう。

　だからと言って、かわいい子ぶるのをやめて男性と同じノリで大騒ぎしたりするのがいいとか、セクシーダイナマイト魔性の女を目指せとかそういう意味ではありません。前者はただの、＜だらしないお調子者＞で、内心みんな「･･･うるせえ」と思ってます。後者には先天的な才能が必要 で、むやみに真似すると人気者どころか笑いものです。概して当地に来ている男性は職種を問わず、同世代の日本在住の男性と比較しても、視野が広く自主独立の気概に溢れた魅力的な人が多い。貴女の好きになった男性も、おそらくそうでしょう。だからこそ、付け焼き刃の美しさ、明るさや優しさ、気配り、包容力なんてものはすぐにボロが出て見破られると思っておいた方がいいでしょう。生半可に彼の仕事や趣味のことに口を突っ込んだり、したり顔でコメントするのも厳禁。女性からしてみれば「立場が逆の場合には気にかけてほしい」という意見が多いかと思いますが、男からしてみればそっとして置いてほしい部分があり、そのあたり随分デリケートなのです。

　我々が他人のことで分かっているのは、「他人のことは完全には分からない」ということだけです。分かったつもりになっているか、分からない部分を自分の感情や感覚で補完して想像することしか出来ないのです。口先よりも、行動。行動するためには時と場合をわきまえた知恵と、実行する力と勇気。そして相手を思いやる心が必要です。経験に裏付けられた知恵。自分を見失わない強さ。そして何よりも他人を思いやる懐の深い真心。それこそが日本女性としての美しさではないでしょうか？　若いとか、ルックスが良いとか言うのは二の次です（もちろん、それに越したことはないですけど･･･）。「酸いも甘いもかみ分ける」と言いますが、自分や他人の弱さを知った上で許容する懐の深さこそが、男女を問わない＜大人の魅力＞てやつだと思います。真のイイ女を目指してがんばってください。

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（ベトナムスケッチ2003年9月号）