借金、寄付、セールス･･･。断り下手な私。
　29屋さん聞いてください。ベトナムに来て3ヶ月、学生生活にもようやくリズムが出来てきた今日この頃なのですが、自分の気の弱さにつくづく嫌気が差してきています。道を歩けば食べたくもないガムや飴を売りつけられたり、タクシーに必要以上の遠回りをされたりというのはしょっちゅうなのですが、2、3回しか会ったことの無い欧米人学生に「頼むから200ドル貸してくれ」と泣きつかれたり（結局貸したけど返ってこなかった）、友人との食事や買い物の際に「後で返すから出しといて」と言われた時には、かなりの確率で忘れられて取りっぱぐれるなど、段々と支出がエスカレートしてきているのです。自分を変える一歩を踏み出すには、どうすればよいものでしょうか？

PN.　スカーレット小原（21歳♀）

他人のガッカリする顔を見たくないというのは、優しさではないのです。
　先ず、貴女自身のガードの甘さは、裏返せば「私が同じように困ったときには、皆助けてくれるのでは･･･」という漠然とした期待が自分への言い訳になっていると思うのですが、どこの国の人であろうと他人に犠牲を強いて平気な人間ほど、自分の出すものに関しては＜ド＞の字が付くケチなので、アテにならないことこの上ナシです。そうでなくとも人間には、喉元を過ぎれば熱さを忘れる都合のいい機能が標準装備されているので、よっぽど貴女と親しいか、並外れて義理堅い人で、たまたま余裕が無い限り、貴女はカウンターパンチをくらうことになります。他人への感謝と言うのは、意外と短命なのです。

　一般的に、だいたいの日本人は金銭のことを話すのが苦手なようです。お互いが顔見知りである狭いコミュニティの中では、「念を押す」ということは相手を疑うことで、よろしくないというわけですが、さまざまな国から来た人が暮らす異文化の坩堝ともいえる場所において、共通の常識、暗黙の了解と言うものはありえません。「何も言われない」⇒「何もしなくても良い」ということなのです。もっとも、欧米にだって「友人に金を貸すと友情を失う」という諺があるぐらいですから、やはり人類共通の悩みと言えそうなのですが、欧米人の友人の暮らし振りを観察してみてください。彼らは、日本人からしてみたら「それくらい我がまま言うなよ」とツッコミたくなるような些細なことでも、通る通らないは別として先ず主張します。毎日毎日、よく疲れないなあというくらい、たとえ仲よしの友達同士でも遠慮がありません。こうすることで火種を小さいうちに消していき、異文化の人間（日本人は、欧米人＝みんなおんなじという認識ですが、彼ら同士の間では完全に区別されている）と意見を戦わせることで結果的に理解を深めていくという付き合い方をしています。逆に日本人同士というのは、お互いが限界まで我慢して、けんかになったときには修復不可能になっている場合が多々あります。貴女も私も日本人なので、いきなり欧米スタイルにするわけには行きませんが、どこかで腹をくくって自分を主張することが出来ないと、下流へ下流へと流されていってしまい、打たれっぱなしのサンドバック人生で終わります。　

　ただし、そうかと言って、人を見たら全て泥棒だと決め付けてしまい、24時間ケンカ腰で過ごしていては、自分も楽しくないし新しい友達も出来ません。結果的に騙されたり損をしたりしても、人を見る目を鍛える授業料だと思って、次へと進みましょう。結論としては、気分のいい日や気が向いた時。自分が納得する相手に納得する金額を貸したり上げたり、物を買ったりしてあげればいいと思います。それを決めるのは貴女自身。彼らじゃありません。そして決めたら、絶対に後悔しないことです。それで貴女から去っていく人ならば不要。残った友人の中から、真に信頼できる人を見つけていく方が、ずっと幸せに近づけると思います。がんばってください。

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（ベトナムスケッチ2003年7月号）