「進むもならず、退くこともできず。結婚を断られた相手と同じ職場で過ごすツラさ」

　29屋さん、はじめまして。ベトナムに来て7ヶ月、大変気まずい事態になっています。出向先で出会った2歳年下のベトナム女性（日本語スタッフ）に一目ぼれした私。猛アタックの末、結婚を前提につきあうことになったのですが、2ヶ月ほど経ったある日、「交際をやめて友達のままでいましょう」と言われてしまいました。彼女いわく、私と彼女とでは宗教が違うし（私はキリスト教、彼女は仏教）、習慣・感覚など違いが多すぎる。だから好きだけど結婚はできないとのことで、今では電話にも出てくれません。会社には毎日出勤し、あいさつや質問には答えるのですが、返事は素っ気ないです。「もしかして彼女は会社を辞めてしまうかも」と思いましたが、その気配も無く、モヤモヤが消えません。私は本社からの要請がないと数年はベトナムにいる予定です。どうすればいいでしょうか？

PN：傷心男（37歳♂　技術指導者)

「相手や周囲の心は決められなくても、自分の心をどうするかは自分で決められるはず」

　もう何年も前の話ですが、当店でスタッフを増員しようとした際、ある女性スタッフが「自分の恋人を雇ってほしい」と言ってきたことがあります。面接してみるとマジメで素直そうな男でしたし、「恋人の面目をつぶすことはしないだろうから一生懸命働くだろう」とも思い採用したところ、期待以上のガッツを見せて給料分以上の仕事をし、カップルオーラで職場の雰囲気も明るくなるオマケつきだったのですが、そんな順調な日々は突然終わりを告げることになりました。ある日の仕事中、突然2人が鬼の形相で口論を始め、激高した彼女が彼氏に猛烈なビンタをかまし、彼氏のほうもブチ切れて反撃。昼さがりの事務所が一瞬にして修羅場になったのです。

　その数日前から2人の口調が妙にトゲトゲしく「ケンカでもしたのかな？」と皆が思っていた矢先の話で、しかも店には肉や魚を切ったり砕いたりする道具がいろいろおいてあるので、下手をしたら新聞沙汰の大惨事になりかねません。なおも戦いを続けようとする2人を従業員一同で「危険物」から遠ざけ、何とかその日は事態を収拾したのですが、結局ケンカの原因は不明のまま。彼氏はその日の帰宅後に電話1本よこしただけでそのまま辞職。彼女のほうも以降、優秀だった仕事ぶりが目に見えて劣化していき、業務が滞るようになりました。最終的には店の立ち上げメンバーでもあった彼女に対して辞職勧告し、「泣いて馬謖（ばしょく）を斬る」形になりましたが、この事件は「カップルが同じ職場で仕事することのメリット＆デメリット」を教えてくれたと、今では思うようにしています。高い授業料でしたが（苦）。

　閑話休題。日本人駐在員が「語学とマナーと教養を兼ね備えたベトナム人女性と知り合い、長時間一緒に過ごす機会」を探してみた時、「自分の勤務先」がその宝庫のように思いがちです。貴男が彼女の「頭のよさ」や「気配り」などを目にし、一目ぼれしてしまうのも自然の流れのようではありますが、これは病院に入院しているときに「仕事モード」の看護師さんを好きになるようなもの。日本人と一緒に仕事をしているからといって、ベトナム人OLのすべてが「プライベートモード」においても日本人の嫁さんに向いているとは限らないのです。

　彼女の場合も、おそらく貴男とつきあった2ヶ月の間で「彼女には気になったのに、貴男は気にも留めなかった」ような大小さまざまなギャップを実感したからこその決別宣言だったのでしょう。貴男にとっては「はい、そうですね」と簡単に割り切れる問題ではないかもしれませんが、貴男がマジメに結婚を前提にした交際を申し込んでいるのに対して、早めに「ごめんなさい、私には無理です」という返事をしたことは、むしろ誠実であるように思われます。

　結局のところ、「飲む・打つ・買う」に溺れるか、「ストーカーorセクハラ扱いされようとも再びアタックする」のか、「別の恋を見つけて幸せを求める」のか。貴男にはいろいろな選択肢がありますが、「心の生傷」が治りきらないうちに起こしたアクションは恋愛的にも会社的にも自殺行為になる危険性がありますので、焦りは禁物です。たとえ愛を取り戻せなくとも、貴男が苦しみの中からどう立ち上がるのかによって、彼女の気持ちが「かつて抱いた愛情」から「軽蔑・嫌悪」に変わるのか、「尊敬をこめた友情」になるのか違ってくるはず。ガッツです。

オフィスジパンング・今日の弁当
29屋さんの日記、他ベトナムの宅配弁当店オフィスジパングの弁当ニュースなど。
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（2008年10月号 / 2008年10月7日 火曜日 12:07JST更新）