「離れるほどに、募る思い。 ベトナム人彼氏の両親に結婚を認めて欲しいのです」

　29屋さんに相談です。私は日系アメリカ人で、15歳の時からベトナム人の男性とつきあっています。留学でアメリカに来ていた彼は、私が18歳になった頃、ベトナムへ帰るように両親に言われ、仕方なく帰りました。帰国後、彼は1度だけ、アメリカまで私に会いに来てくれました。その後は、毎日電話で話したり、メールをやりとりして心を通わせてきたのですが、先日、彼が私に「結婚しようか」と尋ねてきたので「うん」と即答しました。でも、彼の両親はアメリカ人とは結婚させないし、彼をアメリカに住まわせるのも嫌だと言い張っているのです。彼は私と一緒になれないのなら、両親なんかどうでもいいと言っていますが、とても気になります。今、私は21歳です。すごく彼の事を愛しています。どうしたら彼の両親に認めてもらう事が出来ますか？ アドバイスを、お願いします。

PN：M. PZ（21歳♀：大学生)

「彼に家族を捨てさせることより、貴女にはベトナムで暮らす覚悟があるのでしょうか？」

　アメリカを代表するコメディアン、ボブ・ホープの自伝で紹介されていたジョーク。

　ある日、5歳の少年が父親に向かってこう言います。「パパ。ボク、イレインと結婚したいんだ」。父親はにっこり笑って尋ねます。「でも、イレインはまだ11歳だろう？どうやって暮らすんだい？」すると息子は「そうだなぁ。ボクのおこづかいが週に2ドルで、イレインが4ドルだろう？それで足りるよ」。「なるほどね。でも、子供ができたらどうするんだい？」と再び尋ねる父親に、息子はこう答えました。「心配しないで。今のところ、ボクたち、ついてるんだ」。

　洋の東西を問わず、結婚とは「楽しい披露宴」や「甘い新婚生活」を意味するものではなく、「泥臭い現実が次から次へと襲い掛かってくる毎日を、共同戦線で乗り切っていくための社会契約の一種」です。「愛しているから」というお互いの気持ちは出発点に過ぎず、残念ながらそれは生命のはかなさと同じで、大事に育てていかなければ簡単に死んでしまいます。だからこそ、スタートの段階は、せめて万全の準備を整えた上で、周囲からのサポートが円満に得られる形であることが望ましいと思います。

　学生同士であろうと、本人たちが納得していれば、最悪でも家族の反対を振り切って結婚できてしまうアメリカや日本。ところがベトナム人にとって「親を捨てでも結婚したい」なんて口にしようものなら、その場で親からぶん殴られるのは間違いありません。最近の日本やアメリカと違って、ベトナムでは親の権力はまだまだ絶対なのです。

　それに、貴女の恋人のご実家がどれぐらいの資産をお持ちなのかはわかりませんが、少なくともアメリカに子供を留学させられるだけの余裕がある家庭の子弟であるならば、それは結構な上流家庭であることを意味します。アメリカでは単なるアジアからの留学生でしかない彼も、まだまだ海外旅行さえも珍しいベトナムでは間違いなく「洋行帰り」のエリートに属し、彼は家族の中でも期待の星であるといえます。ということは、彼も当然、そのプレッシャーと恩恵を受けながら育っているはず。窮屈ながらも恵まれたバックグラウンドを全て捨て去ってまで、アメリカで貴女と駆け落ち同然の結婚生活を送ろうなんて口にするのは、単なる「若気のいたり」でしかありません。くれぐれも本気にしないであげてください。彼氏自身もひっこみがつかなくなりますし、将来ケンカになったときに「おまえのために、俺は家族を捨ててきたんだぞ！」といわれることは目に見えておりますので。

　貴女にお勧めするのは、とにかく彼を訪ねて1度ベトナムに来てみること。今現在の彼がホームグラウンドでどう暮らしているのかを、その目で確かめましょう。ベトナムとアメリカ、どちらの方が彼にとって幸せなのか。また、もし必要ならば、貴女が彼と一緒にベトナムに住む覚悟があるのかを、よく話し合ってください。その上で彼のご両親に会い、貴女に言葉も生活感覚も全く違う人々と「家族」としてやっていけるほどの精神的成熟度があるのかどうか、面接試験を受けるのです。「便利だし、楽しいから、アメリカで一緒に暮らしたい」という理由だけでは多分不合格なので、ガッツでがんばってください。

オフィスジパンング・今日の弁当
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（2007年8月号／2007年8月24日 金曜日 11:07 JST更新）