＜本日の訪問店＞
カラテチョップ(東京・下北沢)

	(上)甘崎さん／エビカレー（840円）／(左下)豚肉と卵の煮付け丼（840円）／(右下)ベトナムカフェぜんざい（お茶とセット／890円）

「忍さんですよね？」
　突然、前の座席に座っていた女性に話しかけられた。前回のベトナム滞在時、ハノイからホーチミン市に向かう、飛行機の中での出来事だった。話を聞いてみると、実は彼女はベトナムカフェ「カラテチョップ（KARATE CHOP）」の店長、甘崎文慧（かんざき　ふみえ）さんとのこと。メニューの研究も兼ねて、丁度ベトナムに来ている所だという。食べ歩きの資料として私の著書を持って来てくれていて、プロフィールの写真で顔を覚えていてくれたのだ。広い機内で前後の席に乗り合わせるなんて…。「これは何かのご縁」と思い、帰国後、早速お店を訪れてみた。

　店に着いたとたん、思わず「かわいい！」と声が出た。ベトナムでよく目にする鉄格子のついた窓、ベトナム風のカラフルなタイルを使った床。いろいろな要素を組み合わせているのに、不思議と全てがマッチしている。初めてこの店を訪れたのだが、何だか懐かしい気分。妙に落ち着いて、だけどウキウキとした不思議な雰囲気に、私はとても居心地良く感じてしまった。

　店長の甘崎さんは高校生の頃からベトナムに興味を持っており、憧れの国だったという。その後、実際に行くことができたのだが、期待していた通り、やはり彼女にとって、ベトナムはとても魅力的な国に映ったそうだ。そして、その興奮は冷めることなく、この店のオーナーが経営する別のベトナムカフェに通うようになったという。その後、もともとカフェ好きだった彼女は、そこでアルバイトとして働くようになり、１年程前からは、この店の店長を務めているそうだ。

「ベトナムがエネルギッシュなのは、『食』という要素が生活の中で強いからだと思います。そして、そんな生活を大切にして生きているから。だから、ベトナムの『食』のエネルギーをお客さんがこの店で感じてくれて、元気になって帰ってくれることを、私はいつも願っているんです」と彼女。さらに「お客さんに『おいしかったです！』と言われるととても幸せな気分なんですよ」と嬉しそうに語ってくれた。

　彼女の話を聞いているうちに、私がこの店に居るだけで気持ち良くなる理由がわかってきた。ベトナムが大好きで、そんなベトナムの料理を心を込めて作り、お客さんのハッピーを願う…。そんな彼女の真っ直ぐで優しい気持ちが私の心に届き、癒してくれたのだと思う。

＜RESTAURANT DATA＞
VIETNAMESE CAFE KARATE CHOP
住所： 東京都世田谷区北沢2-7-3　１F
電話： なし
営業時間：12：00〜23：00（LO.22：30）
12：00〜16：00（ランチタイム）、17：30〜22：00（ディナータイム／月〜土）
定休日： なし

文＝伊藤忍（ベトナム料理研究家）
1972年生まれ。約4年のベトナム暮らしの後、帰国。現在、日本にてベトナム料理教室やベトナム料理店のプロデュース、執筆を中心に活動。2006年7月末、べとめし本第２弾『ベトナムめし楽食大図鑑』（情報センター出版局）を出版。 詳しくはホームページを。
http://www.vietnamfoodnet.com

（2006年12月号／2006年12月6日 水曜日 18:09JST更新）