知って納得、ますます楽しい
人気の2大物語

　歌と台詞で進行するチェオ。ベトナム語がわからなくても楽しめるが、劇のあらすじを知っておくと、もっと面白くなること請け合い。ハノイでチェオが鑑賞できる「チェオハノイ(Cheo Hanoi)劇場」では、オリジナルストーリーを短縮して上演しているが、ここではその「原型」となる物語を紹介しよう。

ベトナム版シンデレラストーリー
タムカム/Tam Cam/上演時間：約15分

(オリジナル)
　王子が村祭りに参加すると聞き、心躍らせる美しい村娘のタム（Tam）。ところが意地悪な継母に、「白い米と籾殻のついた米を選り分けるまでお祭りに行ってはダメ」と言いつけられ、継母はタムの義理の妹カム（Cam）だけを連れ、お祭りに行ってしまう。しかし、嘆き悲しむタムのもとに仏様が現れ、あっという間に米を選り分けてくれる。さらに美しい衣装を仏様から授かったタムは、村祭りで王子様と出会い、めでたく結婚することが出来た。

(チェオハノイ版)
　物語の概要は同じだが、タムの落とした美しい靴を王子の侍従が拾い、その靴の持ち主を探して王子の妃に迎えようとする、まさに｢シンデレラ｣な物語となっている。カムだけでなく、継母まで靴を履こうとするコミカルなシーンも。

数奇な運命を背負った女の一代記
ティマウレンチュア/Thi Mau Len Chua/上演時間：約15分

(オリジナル)
　原題「ティキン観音(Quan Am Thi Kinh)」。裕福な家庭の妻であったティキンは、ある晩、夫が寝ている間に夫の髭を剃ろうとする。ところが夫は妻が自分を殺そうとしたと誤解し、離縁されてしまう。

　途方にくれた彼女は男と偽り寺の僧となるが、今度は村のお金持ちの娘ティマウ(Thi Mau)に一目惚れされてしまう。当然その恋は実るはずもなく、怒ったティマウは召使との間に出来た子をティキンの子だと言い、押し付けてしまう。黙って子供を引き取るティキンだが、その子が18歳(3歳の場合も)になった時、亡くなってしまう。そこで初めてティキンが女だったことが分かり、村人たちはティキンを祭り、彼女は極楽浄土へと旅立つことができたという。

(チェオハノイ版)
　ティマウがティキンに一目惚れして、一生懸命思いを伝えようとする部分のみを抜粋し、面白可笑しく上演。

優雅で上品
チェオが大好き！

　オーストラリアの大学で歌と踊りを学び、中国の京劇に由来するトゥオン(Tuong)を学ぶため、2005年12月に来越したエレノアさん。

「演劇で成功するため、私にしか出来ないことを模索していた時、在豪ベトナム人アーティストによるトゥオンを見たんです。力強い動きにひと目で魅せられ、そこでハノイのベトナム人家庭にホームステイしながらトゥオンを学ぶことにしたんです。」

　しかし、この時のホームステイ先のお母さんが、チェオで高名なアーティスト、タイン・トゥエット(Thanh Tuyet)さんであったことから、彼女は次第にチェオに惹かれていく。

「パワフルなトゥオンに比べ、チェオは優雅で綺麗、大好きになりました。ベトナム語で歌いながら踊るのは難しいけれど、とても楽しい。これからは世界各地のベトナム人の前でチェオを演じ、彼らを勇気づけてあげたい。また世界中の人に、チェオの魅力を伝えたいんです。」

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（2007年4月号 | 2007年4月23日 月曜日 11:02 JST更新）