中国国境の旅
大自然が織り成す神秘。
絶景、世界の遺産ハロン湾。

　中国への3つのルートから、今回私がこのルートを選んだのには訳がある。それは、ハロン湾の風景と美味しいシーフードを楽しみたかったから。

　ハロン湾の玄関口であるバイチャイの街では、中心街にある郵便局の前にシーフード料理屋が立ち並び、地元の人々も存分に新鮮な海の幸を楽しんでいた。メニューのオーダー方法は実に簡単。自分が食べたい食材を選び、蒸す、焼くなどの調理法を伝えるだけ。巨大なシャコや花がになど、日本ではなかなか味わえないものも普通に並んでいる。ベトナムの食材には、素材を活かしたシンプルな調理法が良いという。そこでそのベトナムルールに従い、私は試しにシャコとカニを茹でただけでいただく。確かに、海辺の町ならではの新鮮な素材。ほのかな塩味と深い味わいに、お腹も気持ちも満足させられた。

　昼食後は、目指す国境の町モンカイへ向け、スピードボートで海を渡る。通常ツーリストが訪れるのはクルーズ船の乗り場だが、モンカイ行きのボート乗り場は、そこから車で10分程離れた少々見つけにくい所にあった。この船旅は約3時間。中国人観光客やモンカイへと戻るベトナム人など、様々な人を乗せ、船はどんどんスピードを早めていく。世界自然遺産に指定され、年々開発が進むバイチャイの町並みは次第に遠ざかり、前にはこれからもずっと変わることない、美しいハロン湾の大小の奇岩だけ。

　あいにくこの日は少し霧がかっていたが、こうした霧に見え隠れするハロン湾のしっとりとした情景もまた、味わい深い。

　船の上では、ほとんどの人が旅の疲れを癒そうと、しばしの眠りに入る。そして、その中で眠れない旅人たちは、お互い見ず知らずのはずなのに、自分のことや家族のことを、そっと話し始める。中国人の彼女がいたが、両親に反対され結婚をあきらめた若者。子供のおてんばさを楽しげに話すおばさん。中国語がしゃべれない私に、中国語で一生懸命話しかけてくれた中国人…。ただその瞬間だけであっても、ひとつの旅がひとつの出会いを生み出していく。チャーターの車では決して味わえない、船旅だからこその出会いがそこにあった。

　モンカイ港の近くは浅瀬になるため、スピードボートは入ることができない。そこで、乗客は古びた漁船に乗りかえた。小さなその船の上は乗客でごった返し、座る場所もないほど。しかし、そんな窮屈さもベトナムの旅ならでは。気が付くと、景色はハロン湾の奇岩から、後ろに大陸の山々が大きく横たわる港の風景へ。上陸した私は、バスに乗り込み、モンカイの街へ向かった。

目指すは遥か大陸の向こう | 海を越え国を渡る1
海を越え国を渡る2 | ベトナムに融け合う大陸1 | ベトナムに融け合う大陸2
いざ国境を越え中国へ1 | いざ国境を越え中国へ2
山を抜け国を渡る1 | 山を抜け国を渡る2 | 風と共に国を行く
中国国境の旅トラベルインフォ

スケッチトラベルで行く中国国境の旅
モンカイ2泊3日の旅 -日帰りランソンの旅

(2005年5月11日 水曜日 11:59JST更新）