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伊能 まゆ さん
「シードトゥーテーブル」代表

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カテゴリ:ベトナムの日本人
更新:2022/01/05 – 09:00

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環境に負担をかけない有機農業を伝え、
ベトナムの農家の人々を笑顔にしたい


農村の暮らしに関心を持ち
NGO団体を発足

「ベトナムで有機農業を広めたり、作る人と食べる人を繋いだり。私は黒子みたいなものです」
 
黒子と言えども、人を惹きつけるエネルギーを放っている伊能まゆさんがベトナムと関わり始めたのは1997年。ベトナム現代史研究者の古田元夫教授に出会ったことがきっかけで、大学を卒業後はハノイに留学。日本とアメリカ、アジアの国際関係論とベトナム語を学びながら、NGO団体による学術調査の翻訳者・通訳者として活動した。その過程で農村の暮らしや食文化に触れ、地域の在来種を守ることや小規模農家への支援、子どもたちの環境教育の必要性を知る。

「実際に農村へ足を運んだことで、各地の生態系に配慮した農業や地域づくりに関心が移っていったんです」
 
一時帰国の後、2003年に日本国際ボランティアセンターベトナム事務所に赴任。2005年から代表を務めたが、2009年に事務所が撤退することになった。

「当時、ホアビン(Hoa Binh)省での持続可能な農業の取り組みに一定の成果が見え始め、少数民族と関係性ができてきた頃でした。それを途中で投げ出すことがどうしてもできなかったので、自分でNGOを立ち上げることにしました。いちばん大変な道を選びましたね(笑)」

未来の人材を育て
農家との話し合いの場を作る

 
2009年に始動した「シードトゥーテーブル/Seed to Table」の活動の大きな傘は、自然環境を守りながら農家の人々の安定した暮らしを支援すること。そして、次世代を担うリーダーを育てていくことだ。

「世界で問題視されていることですが、ベトナムでも高齢化や農家の収入の低さから農業の担い手不足が起きています。私たちはカウンターパートナーである農業専門機関の若手スタッフをコーチングして、各地で実践する有機農業や学校菜園の講師を育成しています。農業大学で学んだアンテナの鋭い若者たちは、とても重要な存在です。彼らが誇りをもって農業を続けていけるような環境づくりや考える視点を提供していきたいです」
 
ベトナム農業省は今後、更に環境教育や有機農業を推進することを明確に打ち出している。また、シードトゥーテーブルが支援したベンチェー(Ben Tre)省やドンタップ(Dong Thap)省の農家が、生産者と消費者との交流を基盤に生産者を認定する「参加型認保障制度/PGS」を取得した事例もある。

「有機農法は栽培期間が長くなることで収穫量が減り、肥料を畑で作る必要があるなど手間がかかります。それでも、高値が付き、環境や人体への影響を考慮すると結果的に良いことを農家の人たちに説明しています。また、在来種の保存や栽培方法を伝える活動も行っています。『畑にまたヘンな日本人が来た』と思われながらも、農家の人々と対話を続けていきます」

伊能 まゆ いのう まゆ
国際ボランティアセンター(JVC)ベトナム事務所で代表を務めた後、2010年に特定非営利活動法人「シードトゥーテーブル/Seed to Table」の法人格を取得。2021年に社会貢献者表彰を受賞。
FB: @seedtotablevn
www.seed-to-table.org

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