奥村 真知子 さん/「国際連合児童基金(ユニセフ)ベトナム」プログラムオフィサー

子どもたちが可能性を伸ばせる世界を目指して 一個人の国際公務員として社会で役立つ人材に

日本とアジアの歴史に衝撃を受け 平和構築への関心が芽生える 小学校の社会の授業で学んだ、日本とアジアの戦争の歴史。ショックを受けたと同時に、将来は日本人として世界の平和に貢献したいと考えた。大学では国際関係学、大学院では人権法を専攻。紛争後の和平、子ども兵や児童婚といった問題も学んだ。 「卒業後、知識だけで理想を訴えるのでは説得力に欠けると感じました。困窮する現地に自ら飛び込む必要があると思い、これまで東日本大震災の復興支援、フィリピンの巨大台風で被災した幼稚園や住宅の再建、ミャンマーの少数民族教育支援などにあたってきました」   来越は2016年9月。国際NGOプラン・インターナショナルが募集していた、外務省が助成するベトナムの少数民族向け教育改善事業に応募したことがきっかけだった。 「山岳・高原地帯の教育環境にはまだまだ課題が多いです。電気やお手洗いがなく、掘っ立て小屋のような教室で勉強している学校も見られ、施設や衛生環境など物理的な部分に加え 、先生方の意識、教育指導法も改善が要されます」   民族ごとで言語が異なるという壁も。事業開始当初、教師陣はベトナム語を理解しない子どもたちに対して、最初からベトナム語だけで威圧的に指導しようとしていた。 「先生方には視覚教材を織り交ぜるなど、ベトナム語を第2言語としてどのように教えるか、また、子ども同士が助け合って問題を解決することの大切さなども理解してもらうよう努めました」 経済成長から取り残された地方 今の私たちにできることとは プロジェクト終了後も引き続きベトナムに滞在。国際機関で働きたいという目標を叶え、現在は国際連合児童基金(ユニセフ/UNICEF)のベトナム事務所に在籍している。これまでの教育関連の事業経験を活かしながら、社会的弱者である子どもを中心に据えた、防災および気候変動対応の取り組みを担当している。 「ベトナムは、長期的に見て世界で6番目に気候変動の影響を受けている国なんです。日本は学校での防災訓練などが充実していますが、ベトナムでは積極的に取り入れられていません。そのための技術的な支援や人々の意識改革などにも取り組んでいます」    ベトナムから教わり学ぶことも多々ある。 「諸々の問題は抱えつつも、ベトナムの子どもたちは本当にたくましいです。貧しくても笑顔が絶えないし、家族を大切にする意識が強いです。人にはそれぞれの幸せがありますが、その幸せの選択肢が広く保障される社会を構築していきたいですね」   少しでも多くの人に、ベトナムの経済格差の問題や地方での貧困の現状に関心を持ってもらえたら嬉しいと語る奥村さん。 「今後は、日本出身という経歴を超えて信頼される存在になりたいです。なお、今回はユニセフの公式見解としてではなく、私個人の考えをお話させていただきました」
奥村 真知子 おくむらまちこ 宮城県仙台市出身。2019年10月まで中部コントゥム(Kon Tum)省、北部ライチャウ(Lai Chau)省における少数民族の幼稚園、小学校教育改善事業を現地統括。現在はユニセフに所属し、ベトナム政府やニントゥアン(Ninh Thuan)省などと共同で防災および気候変動対応に取り組む。