
症例
50代女性。下痢の症状があり、ホーチミン市内の私立病院に1週間入院し治療。全く改善しないため、逃げるように自主退院されて、その足で当院を受診。即日、偽膜性大腸炎と診断し、翌日には軽快した。
抗生剤投与による大腸内の菌交代で
下痢を起こす「偽膜性大腸炎」
偽膜性大腸炎は、抗生剤内服により大腸内の菌交代が起き、通常の抗生剤は効かない“クロストリジウムディフィシル菌”が増殖することで発症します。
通常の抗生剤を投与しても改善せず、治療にはディフィシル菌用の抗生剤が必要です。診断治療が遅れると、手術が必要となることもあります。
偽膜性大腸炎専用の便検査、または内視鏡(大腸カメラ)にて診断します。医師として大切なのは、下痢が始まる前のことも聞いておくこと、つまり「最近、抗生剤の内服はありませんでしたか」という質問です。初日に診断がつかなくても、治療に反応しないことから、何かおかしいな、と感じて気付く場合が通常です。
医師が偽膜性大腸炎を疑わないと
診断できないのが特徴
この患者様の場合、下痢の直前に風邪で抗生剤を内服されており、発症も典型的でした。前医で、手当たり次第の検査をされていましたが、偽膜性大腸炎用の便検査はなく、せっかくした大腸カメラでも、その医師にはわからなかったようです。
当院に持参された大腸カメラの結果は、明らかに偽膜性大腸炎でしたので、あっと言う間に診断され、誤った投薬の中止と、偽膜性大腸炎に対する抗生剤投与にて、速やかに軽快されました。
もし本件が手術になっていれば、言い訳のできない医療過誤です。この方は意志の強い白人女性で、自主退院して他院転院という選択をされたのが、本当に良かったと思います。