
症例
40代女性、2ヶ月以上続く下痢にて受診。これまでも複数の医療機関を受診し、いろいろな抗生剤を投与されていたが、改善なく、検査でも異常なしと言われていた。便の精密検査と大腸カメラを行い、残存する腸炎と、薬剤耐性O157を指摘。適切な抗生剤投与にて軽快した。
今回のドクター
奥田雅人医師/ファミリーメディカルプラクティス・ホーチミン市
① 身近に起こる「O157」
大阪府堺市の集団食中毒でよく知られている「O157」ですが、ベトナムでの下痢の原因を検査してみると、O157がかなりの割合を占めることがわかりました。
保健所などの公的機関の介入がほぼないため、表には出にくいですが、当院を受診された患者様の検査結果から、ホーチミン市内の色々なところで、集団食中毒の原因となっていることがわかりました。
② 下痢の精密検査
下痢が原因の精密検査には、①便培養、②便を用いたDNA検査、③大腸カメラを使った培養、の3つがあります。
①と③を使った培養では、菌を生やして、何がいるかを調べます。②では、病原体のDNAがないかどうかを調べます。①<②<③順に、原因を見つけることができる精度が上がります。
③ ベトナムでの検査事情
ベトナムのほとんどの医療機関では、下痢の原因を特定する検査ができない、あるいは、しない、のが普通で、検査で異常ない、と言われていても、あてになりません。
④ 適切な抗生剤にて治療を
今回のケースでは、耐性菌であるため、効かない抗生剤を投与されると、周りの常在菌は減っても、下痢を起こしている病原菌は減らないため、下痢が悪くなっていました。
当院でも、①便培養と②便を用いたDNA検査で見つからず、③大腸カメラを使った培養にて診断に至り、適切な抗生剤を使うことで、治療ができました。
⑤ 長く続く場合には受診を
下痢のすべてで、医療機関を受診し治療が必要なわけではないですが、なかなか治らないものには、しっかりした検査と治療をしたほうが良いことがあります。