ベトナムの日本人/井出一博さん/中川新介さん/お笑い芸人・ダブルウィッシュ

語学ができない、仕事も足りない。全然満足していない。 ベトナム語の壁を突破し、「超有名お笑い芸人」に跳ね上がりたい

VNS_Japanese_201606 (3) 真っ青なスーツに身を包み、ちょんまげ頭&金髪メガネという凸凹コンビがホーチミン市の中心街を並んで歩く。道行く人は奇抜な見た目に一瞥をくれるが、声を掛けられることは滅多にない。 「いつか囲まれるくらいの超有名人になりたいっすね」。そうつぶやくのは、結成8周年を迎えたお笑い芸人「ダブルウィッシュ」の井出一博さんと中川新介さんだ。 2015年6月、「有名になるまで日本には帰ってくるな」という指令のもと、「住みますアジア芸人」としてベトナムへ。普段は口にこそ出さないが、“お笑い芸人の節目”とされる10年目を強烈に意識していたと言い、「世に出るチャンスをつかみにきた」と中川さん。井出さんも「やれることは何でもやってみたかった」と当時の心境を振り返る。 2016年1月には、初のレギュラー番組となる「オンガク/ONGAKU」がスタート。ベトナム人司会者とのトークを交えながら、日本の音楽をベトナム語で紹介する内容だ。 必死で台本を暗記して本番に臨むものの、セリフが飛んだり、ベトナム語での返しができなかったりと、ハプニングの連続だったという。「プレッシャーで押しつぶされそうだった」という2人を支えたのは、ベトナム人司会者と番組スタッフ。「ミスをしても嫌な顔ひとつせず笑顔で見守ってくれる。とても温かい人たちです」。 ベトナムに来て間もなく1年。この数ヶ月はこれまでにない焦燥感に駆られているという。前のめりの体勢で話す中川さんとは対照的に、だらりと腰掛けひょうひょうとした井出さんがふいに、「内心めちゃくちゃ焦ってますよ」と身を乗り出す。焦りの根源は、予想以上に習得が難しいベトナム語だ。 「数年後のことよりも、純粋に目の前の語学。今の状態は、全ての始まりでつまずいて足踏みしているのと同じ。何が何でも突破口を見つけたい」。 日本では漫才が中心だったが、現在はボケ要素を盛り込んだものまね、体や表情を使ったリアクション芸など、ベトナム人に伝わりやすい芸に路線変更した。ネタは好評だというが、語学は笑いに必要不可欠な要素なのだろうか。 「完全アドリブのトークで笑いがとれると、芸人としての深みが増す。ましてや僕たちのターゲットはベトナム人。ネタがうけても、司会者との絡みがグダグダでは意味がない」と井出さん。中川さんも「もっと面白いことができるのに、という悔しさが常にある。語学の壁を越えたら一気に跳ね上がれると信じたいです」と続ける。 「ベトナムの誰もが知るお笑い芸人になる」。 出発時に思い描いていた夢への到達度は、現在わずか「2%」。それでも「ローカル劇場に挑戦してベトナム人相手にネタを磨き、確実に笑いをとりにいきたい」と二人は意気込む。焦る気持ちを抑えつつ、地道なベトナム語との格闘と笑いへの挑戦が未来を切り拓くことを信じて。
井出一博 いでかずひろ(写真右) 1983 年、熊本県生まれ。ツッコミ担当。 中川新一 なかがわしんいち(写真左) 1982 年、熊本県生まれ。ボケ担当。 吉本興業所属のお笑い芸人で、コンビ結成は2008年。台湾、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムの5ヶ国で展開しているアジア版「あなたの街に"住みます"プロジェクト」の芸人として、2015年6月渡越。
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