ベトナムの日本人/大谷彩乃さん/アーティスト

フランス人の友人が見初めた絵から、アーティストに。 ここでの交流を通してヨーロッパに羽ばたける作品を作りたい!

Ootani_ayano 幾何学模様のように精巧な鉛筆画、かすかに憂いを含んだような少女の横顔。モノトーンを基調とした色使いの中に、時折差し込む淡くも鮮烈な原色。ホーチミン市在住者なら、大谷彩乃さんの作品をどこかで知らずに目にしたことがあるかもしれない。 2010年、日系出版社の駐在員として初めてベトナムの土を踏んだ大谷さん。「小さいころから、個人的に絵は描いていましたが、それを人に見せるという発想はありませんでした」と語る。 そんな大谷さんがアーティストとして活動することになったきっかけは、彼女の部屋でその絵を目にしたフランス人の友人の言葉。「絶対に個展を開いた方がいい」という強い勧めに従い、2012年10月、人生初の個展を開催。今までは自分の心だけを満たすためのものだった作品が、多くの人の目に触れることになった。 「私の作品に見える日本人の繊細さが、新鮮なものとして捉えられたのでしょう」と語るように、ホーチミン市とパリを行き来して活動するフランス越僑をはじめとするアーティストが大谷さんに興味を示し、作品のコラボレーションを持ちかけられることになる。大谷さんのイラストをファッションデザイナーが生地のプリントやパターンとして印刷して洋服やスカーフ、バッグを作ったり、クラブやホテルの壁画のデザインを頼まれたり。また、香港やシンガポール、ソウルでの国際展示会にも参加した。 「日本人が重んじるのは協調性ですよね。でも、フランス人はまったく逆。意見と意見のぶつかり合い。自分が大切と思うことをはっきりと主張し、周囲に影響を与えられなければ、ビジネスパートナーとして認めてもらえないんです」。 こうした小さなパリのようなコミュニティを通じた創作活動は、大谷さんの性格や作風にも影響を及ぼしていったという。 「明るくなりましたね、性格も作風も。日本にいたころは、シャイでした。作風も暗くって、一見して『病んでる』みたいな。もともと自己完結の世界でしたからね。ここで人と関わり、互いの個性を生かし合いながら創作していくことの楽しさを知りました」とほほ笑む。 また、芸術に関して発展途上のベトナムだからこそ、しがらみが少なく新しいことを始めやすいという利点があるという。のびのびとした創作環境ゆえに個性を発揮できていると思う反面、ベトナム人とのやり取りの中では、首をかしげざるを得ないようなことも。 「今のベトナムは生活の質の向上が第一。芸術はまだ二の次なんです。見る目や作品の質はもちろん、著作権意識など芸術家に対するマナーも低いのが現状です。ただ、若い人たちの好奇心の旺盛さやダイナミックな作風は目を見張るものがありますよ」。 着実にアーティストとしての成功を積み重ねてきている大谷さん。 「ここを起点にキャリアを重ね、いつかはヨーロッパに羽ばたきたいですね」。
大谷彩乃 おおたにあやの 東京都生まれ。大学卒業後、グラフィックデザインの勉強を経て、駐在員として渡越。2012年よりアーティスト活動を開始。ファッションデザイナーのリンダ・マイ・フン(Linda Mai Phung)ら、多数のアーティストとコラボなどを行う。 http://ayanootani.com
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