No.035 白の下にあるもの
Yamazaki Higiri
地震国から来た身にとっては少し羨ましくも思うのだが、ベトナムの多くの塀や壁は積み重なったレンガで造られている。赤みの強い当地のレンガの色は、そのままでも街の彩りとして成立するが、人々は好んですべてを白で覆う。レンガだけでなく、鉄も、木も。
白は日本におけるそのイメージと同様に、清く美しく無垢なるものと考えられている。ひと昔前までは女学生の制服のアオザイは白と決められていたのも、象徴的な話だ。
しかし問題はベトナムの過酷な自然環境。白は白のままではいられず、ほどなくしてその本性を表す。雨風や粉塵により、清らかさは汚れ、はがれ落ち、元来が無垢だったその色は、かえって不浄を目立たせる。
それでも人々は何度でも白を塗る。汚れる、白で覆う。暴かれる、白で覆う。こうした不完全な白は、むしろあたたかみがあり、この街に残る雑然とした景色とよく調和していると思う。
写真・文/山崎ひじり
雑誌を中心に活動する、ホーチミン市在住のフリーランスエディター。
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