メディカルトーク/第90回 外飼いの猫に注意/トキソプラズマ症

メディカルトーク症例

30歳代の女性がインフルエンザのような症状で来院。トキソプラズマへの感染が確認されたが、健康な状態で特に妊娠もしていなかったため経過観察に。

今回のドクター

ウィリアム・ブライアン・マクノール(William Brian McNaull)医師/ファミリーメディカルプラクティスハノイ
①トキソプラズマ症とは? トキソプラズマ原虫が人に寄生して起こる感染症です。世界中で見られ、感染するとインフルエンザに似た症状が現れることもありますが、症状が全く出ないことがほとんどです。 健康な状態であれば特に治療は必要ありませんが、妊婦や免疫力低下状態にある人は深刻な合併症を引き起こすことがあります。 ②妊娠前後に感染したら 女性が妊娠直前あるいは妊娠中に感染すると、妊婦に症状が現れなくても約3割の確率で胎児感染を起こします。死産や流産だけではなく、乳幼児に痙攣や肝臓・脾臓の肥大、黄疸などが現れ、時には深刻な眼感染症などを引き起こすことがあります。妊婦が感染して症状が出ても、治療によって胎児感染のリスクを下げられます。なお、妊娠前の感染はほとんど問題ありません。 妊婦が感染しても胎児が非感染の場合、害を与えず胎児への感染予防が可能な抗生物質(スピラマイシン)などを処方します。胎児も感染していれば、マラリア予防薬であるピリメタミンや抗生物質スルファジアジンを処方する場合がありますが、極めて深刻な状況に限られます。 ③どうすれば予防できる? 感染した猫の排泄物や、汚染された野菜、肉などから感染するため、次の点を心がけましょう。 ①土に触る場合はゴム手袋を着用、 ②生肉や半生肉を食べない、 ③調理器具をしっかり洗浄し、生肉を触った後は手を洗う、 ④果物や野菜はよく洗う、⑤低温殺菌していない牛乳は飲まない、 ⑥ペットの猫は常に室内で飼い、決して生肉を与えない、 ⑦飼い猫のトイレの砂は毎日替え、箱を熱湯消毒する(薬剤での消毒は効果がない)。 ベトナムの猫は外飼いがほとんど。妊婦は接触を避けましょう。
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