メディカルトーク/第85回 流行の兆しをみせる/非定型手足口病

メディカルトーク症例

2歳女児が来院。高熱と食欲不振が2日間続き、3日目に口周り及び全身に痒みを伴う発疹が発生した。診察の結果、非定型手足口病と診断。受診数日前に、手足口病を発症した子どもとの接触があった。

今回のドクター

シンシア・S・ダカナイ(Cynthia S.Dacanay)小児科医/ファミリーメディカルプラクティス・ハノイ
①手足口病とは? 数年ごとに世界各国で大流行が見られる手足口病。腸内ウイルスであるコクサッキーA群16及びエンテロウイルス71が原因の疾患で、一般的には1~5歳以下の小児に多く見られます。 1~2日間中程度の熱や喉の痛み、食欲低下が見られ、その後、口蓋に痛みを伴う赤斑や水疱が発生し、潰瘍状に変化します。また、手の平や足裏に扁平や隆起のある皮膚赤斑が現れます。 ②今年は非定型が蔓延 今年は通常と異なり、コクサッキーウイルスA6が原因の「非定型」の手足口病が蔓延しています。 主な症状としては、(1)高熱、(2)深刻な広範囲にわたる発疹、(3)扁平または隆起した水泡や、かさぶた状の発疹、(4)手の平、足の裏以外に、口の周り、手足の背側面、胴体、でん部の肛門近くの発疹、(5)皮膚の剥離、(6)初期症状の後、爪が剥がれるなどです。単純・水痘帯状ヘルペスや川崎病、膿痂疹と誤診されることもあります。 ③人から人へ感染  一般的な手足口病と同様、唾液や痰、便、感染者が触れたものを介して感染。感染力が最も強いのは最初の1週間ですが、回復後の数週間は感染する恐れがあるので、こまめな手洗いを心がけましょう。 ④しっかり水分補給を 自然に治るため特別な治療法はありませんが、発熱を緩和する薬の内服、口腔内の痛みを和らげる軟膏を使用できます。食欲が減退する場合もあるので、脱水防止のため水分補給が重要です。哺乳や咀嚼が困難な時は、点滴での水分補給が必要です。 ⑤予防と早めの治療を心がけて まれに、ウイルス性髄膜炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こすことも。症状が発生した場合は、直ちに医師の診察を受けましょう。
関連記事
Related Articles
メディカルトーク ワクチンのキャッチアップ接種 大部分はベトナムでも接種が可能
2021.04.19

メディカルトーク ワクチンのキャッチアップ接種 大部分はベトナムでも接種が可能

メディカルトーク 歯に着色してしまう「外来性色素沈着」 ベトナムの水も関係しているかも
2017.08.08

メディカルトーク 歯に着色してしまう「外来性色素沈着」 ベトナムの水も関係しているかも

メディカルトーク 歯の根元の段差が気になっていませんか?/咬み合わせが原因の「楔(くさび)状欠損」かも
2017.03.23

メディカルトーク 歯の根元の段差が気になっていませんか?/咬み合わせが原因の「楔(くさび)状欠損」かも

過度のアレルギー反応「アナフィラキシー」/母子感染や性行為、輸血による感染リスクも
2017.02.24

過度のアレルギー反応「アナフィラキシー」/母子感染や性行為、輸血による感染リスクも

メディカルトーク 「生理痛」、痛み止めだけで我慢していませんか?/つらいときには低用量ピルも有効な手段の1つ
2016.11.23

メディカルトーク 「生理痛」、痛み止めだけで我慢していませんか?/つらいときには低用量ピルも有効な手段の1つ