ヴィジュアル☆ベトナム/PHOTO STUDIOS IN VIETNAMESE LIFE/ベトナム暮らしでのフォトスタジオ

C8 ヴィジュアル☆ベトナム先月号では、サイゴンの路上カメラマンが撮った素晴らしいポーズの写真について述べた。これらの写真の大半は、市内のフォトスタジオで現像された。20 世紀の大半を通してこの業界は繁盛したのだ。 ベトナム最初のフォトスタジオは、メディアの発明から30年後の1869年にハノイで創業した「カム・ヒエウ・ドゥオン/ Cam Hieu Duong」。オーナーのダン・フイ・チュー(Dang Huy Tru /鄧輝著、写真右)は、その数年前に香港で機材を揃えたとされる。その後、数十年にわたってスタジオはインドシナ全土に出没。中でも有名なカイン・キー(Khanh Ky)はハノイで誕生し、後に植民地全土に数百人の従業員を雇うまでに成長したとされる。オーナーはパリでも活躍した。 当初、写真はベトナム人にとって宗教的な意味があった。今日でも行われるように、先祖をまつる祭壇に飾られたのだ。1920 年代までに、写真は結婚式や家族写真などにも使われるようになった。アマチュアもカメラを持つようになったが、これは金持ちの趣味だったため、前号で話した路上カメラマンの需要があったわけだ。写真アルバムを所有していることも特別だったが、1960 年代には自宅や休暇中の気取らない、または面白いポーズのスナップショットが増え、私たちにとっても馴染みのある家族生活を物語るようになった。 サイゴンのスタジオ文化は、有名で大規模なキングス(Kings)、ドンダー(Dong Da)、ミーサン(My Sanh)などのロゴが型押しされた写真で今でも確認できる。これらのスタジオは証明写真、おもわずプロポーズしたくなるような魅力的なポートレート、フォーマルな家族写真、小道具や背景と一緒に撮った奇抜な写真などの要望に応えていた。 都会人が気軽にスタジオへ行くようになったとはいっても、特別な出来事であることは変わらなかった。この写真に対する特別感は21世紀に入るまで続いた。この頃にはカメラを所有することは贅沢ではなく、あらゆる場合に持っていて当たり前のものとなっていたけれど。
Sue Hajdu スー・ハイドゥー オーストラリア人アーティスト、写真家、文筆家としてベトナムと日本で活動。シドニー大学・日本学の学士号、同大学院視覚芸術の修士号をもつ。 www.suehajdu.com facebook: Sue.Hajdu.Projects
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