ベトナムの今がよくわかる/ベトナムニュース解説 12月号

ベトナムニュース解説外国投資、 零細プロジェクトを「排除」へ

ダナン市は、投資の質向上などを目的に、外国直接投資(FDI)登録額に関する規定改正を計画投資省に求めた。 このところ同市で登録される外資プロジェクトのほとんどが小規模で、ハイテク分野や裾野産業への投資が少ないためだ。投資額10万US$未満のものが市の外資事業の半数を占め、5000~7000US$という例もある。 少額事業はコンサルティングやIT関連サービスが多く活動効果は低い。ホーチミン市などでも同様のことが起きており、計画投資省も最低投資額の規定を設けることを検討している。 (『Dau Tu』2012年10月10日、p.04)

解説

2007年の世界貿易機関(WTO)加盟以来、外国投資が急増しているベトナムですが、近年「中身のない」大規模投資と小規模投資が問題となっています。 問題の大規模投資は、数十億US$という大金を投じるとして土地を確保、認可を受けながら、何年も事業を展開せず放置したままというもので、不動産関係が多くなっています。 小規模投資では、もともと投資ではなく就職先探しなどが目的で、少額で認可を受けているものがあるようです。 外国人の不法滞在・就労の管理が厳しくなるなか、事業を行なう「投資家」なら、入国や滞在条件(1年のビザ発給、労働許可書の取得不要など)が緩くなるといった理由があるようです。 ベトナムが国として投資を誘致したいのは、例えばハイテクや裾野産業などで、大きな外貨を落とし、雇用を生み、技術移転を進め、国の工業化、持続的な経済発展に有効な事業です。 むろん投資額の大小だけで単純に判断することはできませんが、国にとって有効性の低い「投資」が増えるようなら、外国投資全体として管理が厳しくなる可能性もあります。

薬殺刑導入から1年も運用されず、国会で批判

2011年7月1日(金)に発効した刑事判決執行法が事実上運用されておらず、国民が疑問を持っているとの指摘が国会でなされた。 ある議員は、「現在500人の死刑囚が決定を待っている。1年で80~100人に死刑判決が出るため、少なくとも執行が5年分滞っていることになる。これは社会的に様々な問題をはらみ、法律の厳粛性にも大きな影響がある」と発言。「死刑を執行する薬が確保できない」という最高人民検察院長の発言を引き合いに、運用環境が整わないなかで、法律を採択した性急さを批判した。 (『Lao Dong』2012年11月3日、p.01)

解説

ベトナムは死刑存置国であり、これまでは銃殺により刑が執行されていました。2011年7月1日(金)から薬殺に変更されましたが、薬をベトナムで生産できないため、輸入する必要がありました。しかしこの輸入で問題が出ているようです。 法務大臣によると、輸出国側から薬を死刑執行に使わないという条件が出されており、薬殺刑への使用が分かれば、他の治療薬供給にも影響が出る可能性があると勧告されているようです。 死刑執行ができない状況を解決すべく、多くの国会議員から一時的に銃殺刑を復活させることが提案されています。

無年金老人2000万人、2030年予想

高齢化が進むなか、ベトナムは無年金老人の問題に直面することになる。2012年10月末にハノイで開催された国際セミナーで、国会社会問題委員が指摘した。2013年は無年金の高齢者が900万人程度だが、2030年には約2000万人に上る可能性がある。 同委員によると、現在ベトナムの高齢者の70%は貯蓄財産がなく、毎日の支出に用いる収入源の32%は子ども達の支援によるもの。 (『Phap Luat』2012年10月27日、p.03)

解説

若年人口に注目されることの多いベトナムですが、すでに高齢化社会の入口に立っています。国勢調査によると、総人口に占める65歳以上の割合は1989年の4.7%から2009年は6.6%に拡大しています。 定年退職年齢は男性60歳、女性55歳ですが、労働傷病兵社会福祉省によると、年金を受給できる社会保険加入者は、労働者の約20%にとどまります。 定年後の生活を自分自身で支えられる人は少なく、高齢者の8割が子どもや孫と一緒に生活しているようです。子どもが親の面倒を見る習慣が根強いベトナムでは、親を老人ホームに入れることが親不孝と考えられていることもあるようです。 1人の年金受給者を支える社会保険納付者数も急減しており、1996年に217人で1人の受給者を支えていたものが、2010年は10.7人にまで落ちており、2023年には社会保険収入額と支出額が等しくなると言われています。
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