伊藤忍のベトナムめし大全/第43回 花鍋 Lẩu Hoa

花鍋 Lẩu Hoa 伊藤忍のベトナムめし大全1年を通して温かいベトナムの南部地方では、植物の花を食べる料理がいろいろあります。実は南部の気候では、日本の様に1年に1度だけ花が咲き実がなるのではなく、生育期間がとても短く、年に何度か花、実をつけるのです。市場などに行くと、野菜売り場に食用の花が売られていたり、食用花専門の売り場があることもあります。 日常の家庭料理でも花を使った料理は食べられていますが、特にレストランなどでは、見た目がきれいな花料理が、必ずと言っていいほどメニューの中に用意されています。 以前、こちらのコーナーでもご紹介した「ボンビー/Bong  Bi」(Bong=南部の言葉で花、Bi=瓜系の野菜を指す言葉、ここではかぼちゃ)は食用花の代表格で、よく炒めて食べられ、花の根元や少し残っている茎の部分は独特の食感で濃くて深みのある味です。 豆科の植物の白く大きい花の「ボンソーデゥア/Bong So Dua」は、スープや鍋なによく使います。ほろ苦いので、特に酸味のあるスープと相性は抜群です。また最近は赤い花の「ソーデゥア/So Dua」が人気で、他のアジアの国から木を持って来て栽培されていて、料理に白と赤の2色の花を使う店もあります。 さらにはキョウチクトウ科の植物で黄色くて小さい花の「ボンティンリー/Bong Teng Ly」(イエライシャン・夜来香)。こちらは小さい花のつぼみがコリコリとよい食感で、コクのある味です。 中国料理でもよく使われるユリ科の「ボンキムチャム/Bong Kim Cham」(金針菜・ワスレグサ)などは、炒めて食べるのがポピュラーで、こちらはシャクシャクとした食感がたまりません。 そんな花料理の中でも、これらの花を一度に食べられる料理が花鍋「ラウホア/Lau Hoa」(Lau=鍋料理、Hoa=花)です。数種類の花と魚介や野菜などを、店によってあっさりか甘酸っぱ辛いスープなどで煮ながら食べる料理です。鍋の縁に具材がのせられる帽子型の鍋で出てくることが多く、見た目にも豪華。誰かをおもてなししたい時には最高の料理なのです。 見た目を楽しんだ後は、崩すのがもったいないですが、しっかり料理を味わってください。「花より団子」とよく言いますが、こちらは花も団子も1度に楽しめる料理ですね。 (写真上)縁に盛られた花と魚介がとにかく華やかで、食卓に登場したとたんに「わ~きれい!」と思わず声が。花は風味を損なわないようにサッと煮るのがよい

花鍋 Lẩu Hoa 南部の市場では、野菜売り場にこの様に普通に花が並んでいる

伊藤忍(ベトナム料理研究家) 2000年より約 4 年間のベトナム暮らしの後、帰国。現在、日本にてベトナム料理教室やベトナム料理店のメニュー開発、執筆を中心に活動。2011年7月に新作『ベトナム×ハノイ36通りグルメ』(情報センター出版局)を出版。詳しくはホームページ(www.vietnamfoodnet.com)を。
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