第73回 対処が異なる細菌性&ウイルス性髄膜炎

ベトナムメディカルトーク症例

5歳女児の母親が、髄膜炎がホーチミン市内で発生していると知り、髄膜炎についての対処法を詳しく教えてほしいと来院。症状や対処法などを伝えた。

今回のドクター

富浜有香医師/インターナショナルSOSホーチミンクリニック
①髄膜炎とは? 「髄膜炎」は、脳または脊髄の髄膜の炎症を指します。①ウイルス性、②細菌性の2種類があり、症状はどちらも頭痛・発熱・嘔気嘔吐などですが、①と②のどちらによる髄膜炎かで発症後の経過や治療方法が異なります。 細菌性の場合、炎症が進行すると意識障害、手足の麻痺、痙攣などが起こります。新生児や乳幼児では、はっきりと見分けられる特別な症状はありませんが、急な高熱、泣きやまない、機嫌が悪い、食欲不振、吐く、痙攣などが見られたらすぐに受診して下さい。 ②細菌性は迅速な診断・適切な治療を ウイルス性髄膜炎は、対症療法で安静にしていれば、発症後は比較的良好です。水痘(みずぼうそう)に伴う髄膜炎では、抗ウイルス薬を用います。 一方、細菌性髄膜炎はウイルス性髄膜炎と異なり、様子を見ていても良くはなりません。後遺症を残すこともあるため、迅速な診断と適切な抗生剤による治療が必要。深刻な場合は、確定診断前に抗生剤投与を開始します。 ④予防は日常生活の心がけから 細菌性髄膜炎の場合、ワクチンのあるものは予防接種を受けましょう。乳幼児に多く見られるインフルエンザ菌性髄膜炎には、ヒブワクチンが有効です。髄膜炎菌性髄膜炎には、髄膜炎菌ワクチンA+C混合がありますが、ホーチミン市で発生が認められるB型の髄膜炎菌性髄膜炎には有効ではありません。 日常生活での予防も怠らないようにしましょう。細菌性髄膜炎の多くは飛沫感染。くしゃみや咳などをまともに浴びない、浴びたら洗い流す必要があります。不要不急の外出を避ける、マスクの着用、石鹸による手洗い、うがいなどを怠らずに。特に、水だけでの手洗いでは不十分で、(1)石鹸を必ず使う、(2)手首から先ではなく、前腕から先をしっかり洗うことを習慣付けておくことが大切です。
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