2011.12.17

ハザン省ドンヴァン/山岳民族を訪ねる旅/「山のしあわせ。」

山のあなたの空遠く「幸」住むと人のいふ。

山のあなたの空遠く 「幸」住むと人のいふ。 カール・ブッセ作/上田敏訳 『海潮音』より

そびえ立つあの岩山のかなたには、いったいどんな悦びがあるのだろうか。山に暮らす人びとの幸福を訊ねる旅に出た。
ハザン・ドンヴァン 山岳民族を訪ねる旅 山のしあわせ。 撮影 西澤智子 PDF6.6M 表示 / ダウンロード

「あなたのしあわせは何ですか?」

天空の桃源郷、ハザンの旅 観光客であっても、外国人には入境許可証の取得が義務付けられている、辺境の山岳地帯ハザン(Ha Giang)省。誰もが息を呑む雄大な山並みをドライヴしながら沿道に住む山岳民族の暮らしを垣間見るツアーが、欧米人を中心に人気をよんでいる。ハノイから車で約6時間北上した、省都ハザンが旅の出発点。古都ドンヴァン(Dong Van)を経て、メオヴァック(Meo Vac)の町を目指すルートが一般的だ。サイクリングやツーリングを楽しむ旅人も多い。 山肌に張り付くように建つ小屋の軒先に下がる黄色いトウモロコシの房。自分の身体よりも大きな薪の束を背負い、踊るような足取りで山道を進む民族衣装の少女たち。わくわくした気持ちを全身からあふれさせた若者たちで賑わう山あいの青空市場。見る者全てを魅了する絵葉書のような光景の連続だ。 しかし、絶壁といってもいいような岩肌のわずかな耕地に種をまき、桶で毎日水を運ぶ高地の生活が過酷でないはずがない。それでも彼らの瞳はいつも青い空を映し、満ち足りて見える。いざ、山のしあわせを探りに、ベトナム最後の秘境ハザンへ。

脱穀は村人総出で行う 脱穀は村人総出で行う

一見ただの岩山だが、頂上近くまでびっしりとトウモロコシ畑が広がっている 一見ただの岩山だが、頂上近くまで びっしりとトウモロコシ畑が広がっている