29屋的越南恋愛コラム／「きれいな花は、トゲがあるからこそ／美しさを守れるのではないか？」／第02回

細くて、清楚で、かわいらしい。そんなベトナム女性は、なぜ「変身」するのか？

大和撫子なる種族の絶滅が危惧される今日この頃。細くて、清楚で、かわいらしいベトナム女性に、「日本で失われつつある女性らしさ」とやらを見出し、惚れ込む日本男児は少なくない。ところが首尾よくカップル成立して、結婚までこぎつけたのはいいものの、気がついたらベトナム嫁が恐るべきパワーアップの末に「鬼嫁」と化すケースも後を絶たないという。最初はラヴリーな仔猫ちゃんを飼ったつもりだったのに、成長したら巨大な虎に変貌していたかの如き恐怖。口喧嘩は全敗。「武士の情け」はゼロ。疑わしきは全て罰せられ、家庭内の自治決定権も奪われる。なまなかなことでは太刀打ちできないレベルの「恐怖政治」を嘆く日本人男性諸子が、あたかも隠れキリシタンのように、あちらでもこちらでも息を潜めて傷を舐め合っているというのだ。家庭によって程度の差こそあれど、総じてベトナム女性は、旦那の言うなりになどならない。その外面の優美さ、愛らしさと相反するかのような剛健さは、どこから来るものなのか？

「上様はおなごを、ただ『かよわきもの』とのみ、お考えでございましょうや？」

池波正太郎・作『真田太平記』の劇中、若き日の真田幸村が豊臣秀吉と初めて対面し、完成したばかりの大阪城について感想を求められ、「おなごのような城と覚えまする」と答える。「そりゃ、弱そうって意味か？」と、ムッとする秀吉に対して幸村は平然と言うのである。「上様はおなごを、ただ『かよわきもの』とのみ、お考えでございましょうや？　この城は、遠目には艶やかで美しゅうございますが、中に入れば堅牢至極。二重三重に罠がめぐらされ、容易なことでは攻め落とされませぬ。さればこそ、おなごのようではありませぬか？」。もしも城に、堀も櫓も罠もなければ、敵軍は労せずしてやりたい放題。甘い香りのする花に、毒やトゲがなかったならば、たちまち虫や鳥に食われてしまう。歴史上、常に身を守るための戦いを続けてきたベトナムの人々には、DNAレベルで「弱者の仮面」と「隠し持った力」を状況に応じて使い分ける知恵が備わっているように思える。だからこそ、無用な敵を作らないために外づらは良くなるし、身内に遠慮していたら戦いにならないのでガンガンと言いたいことをぶつけてくる。「やさしい」日本人は、そのテンションに気後れしてしまうから、相手が急に手のひらを返したように思えるのかもしれないが、いってみれば「外」から「内」に入って仲間扱いされ始めたのだから、当たりがきつくなって然るべきなのではないか。「美しさを守るための強さ」に釣り合うためには、こちらも強くなって「一緒に人生を戦う勇気」を、ガッツで作るべきなのである。