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コラム詳細

伊藤忍のベトめし大全
おいしくてヘルシーと、日本でも人気のベトナム料理。
その魅惑の世界へベトナム料理研究家・伊藤忍がご案内します。

<第十五回> カオラウ [Cao Lau]

ベトナム viet nam
食べる時によく混ぜて、煮豚の汁をしっかりと全体にからめる

中部ホイアン(Hoi An)名物の「カオラウ」は、米麺に生野菜と煮豚、煮豚の汁をかけ、和えて食べる麺料理。これを食べると、麺のコシの強さが印象に残ります。小麦粉麺と異なりグルテンの少ない米麺は、うどんや中華麺のようなコシではなく、その柔らかさ、プルプルとした食感を楽しむもの。ベトナムの麺をそう認識してカオラウを食べると、かなり驚きの食感です。

なぜここまでのコシが生まれるのかというと、米以外の原料と製麺方法に秘密がありました。この麺を作るにはホイアンならではの2つの水が使われます。1つはホイアンの井戸水。明礬(みょうばん)と同じ成分が多く含まれ、麺にしなやかな弾力を与えます。もう1つは、ホイアン近くのチャム(Cham)島で作られるアルカリ性の強い木炭の上澄み液。現在は中国から「かんすい」を買って使うことが多いのですが、昔はこの水を使っていたとか。どちらにしても、これらのアルカリ成分が麺にシコシコとした食感を与えるのです。

そして麺の作り方。2つの水と米粉を合わせた生地を蒸し器で蒸します。その後、少し硬くなった生地をなめらかになるまで機械でこねます。そして生地を麺棒でのし、包丁で裁断、再度蒸し器で蒸すと完成。米粉は2度加熱されることで硬さを増し、かみごたえのある独特の食感になるというわけです。

カオラウは、コシに負けないしっかりした味の具材や、食感の組み合わせで食べられます。大豆醤油「シーザウ / Xi Dau」、五香粉などが染みこんだ煮豚とその煮汁、サッパリした生野菜、そして麺と同じ生地を角切りにしてラードで揚げたパリパリのあられ。これらを丼に盛り、よく混ぜます。口に入れた時、それぞれが他の具材を引き立て合う見事なハーモニーが楽しめます。

実はこのカオラウ、日本の伊勢うどんがルーツとも言われています。朱印船貿易時代、ホイアンには世界の商人達が集まり、日本の伊勢の商人も日本人町を作って住んでいました。うどんの材料を発注する当時のメモが残っていたことから、ホイアンでも伊勢うどんが作られていたとされ、何かしら影響を与えたのではと考えられているのです。また、麺にアルカリ性の強い水を使ったり、煮豚に醤油や五香粉を使ったりするあたりは、その後多く住み着いた華人の影響と言われています。どちらにしても、ホイアンという町の歴史が作り上げた、この土地ならではの麺料理なのでしょう。

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カオラウの製麺所では早朝から麺作りが始まる

=伊藤忍(ベトナム料理研究家)
2000年より約4年間のベトナム暮らしの後、帰国。現在、日本にてベトナム料理教室やベトナム料理店のメニュー開発、執筆を中心に活動。2008年10 月、ベトめしレシピ本『はじめてのベトナムおかず』(情報センター出版局)を出版。
詳しくはホームページ(www.vietnamfoodnet.com) を。

(2010年4月号 / 2010年04月08日木曜日 21:59 JST更新)