Pho – ハノイとサイゴンのフォーを知る
カテゴリ:今月の特集
更新:2022/03/01 – 10:00
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フォーの成り立ち
今でこそ数あるフォー料理だが、元来、フォーと言えば牛肉入りのスープ麺を指す。もともとは北部の屋台料理で、その起源や名前の由来には諸説あり、全土に広まったのは1950年代以降のことだ。
フォーの起源はナムディン省の水牛料理?
20世紀初頭から残る文献や民間伝承によると、フォーの前身は紅河の河原や渡船場から生まれた庶民的な水牛料理「サーオチャウ/Xáo Trâu」だとされる。薄切りにした水牛肉をハーブと炒めて、スープで煮込んだものだ。フランスの保護領となった後は、牛肉を食すフランス文化の影響を受けて牛肉に置きかえた「サーオボー/Xáo Bò」が登場し、これが現在のフォーの原型とされる。ナムディン(Nam Định)省ザオクー(Giao Cù)村は今でも「フォーコー/Phở Cồ」ブランドで知られるフォーが特産だが、フォーの発祥地がナムディン省かハノイなのかは、意見が分かれている。
ハノイで発行された『1908~1909年の安南人の技術/Technique du peuple Annamite 1908-1909』(アンリ・オジェ/Henri Oger著)には、「フォーの屋台/Gánh Phở Rong」の写真が掲載されている。
言語で見る「フォー」の名前の由来
実はフォーの起源と名前の由来については諸説あり、広東語の牛肉粉(Ngưu Nhục Phấn)の「ファン/Phấn」や、フランスの牛肉と野菜の煮込み料理ポトフ(Pot-au-Feu)の「フー/Feu」が由来だとされる。だが、どちらも牛肉スープ麺のフォーとは異なるとして否定的な意見も多い。
漢語を組み合わせたベトナムの固有文字「チューノム/Chữ Nôm/喃」では、フォーは「米」偏に音を表す「頗」を組み合わせて記され、「フォー/Phổ」と発音した。これが次第に現在の「フォー/Phở」の発音で定着し、1930年発行の『ベトナム辞典/Việt Nam Từ Điển』に初めて「フォー/Phở」という単語が収録された。
鶏肉フォーの登場とサイゴン、そして世界へ
もともと牛肉を使ったフォーだが、1939年には鶏肉のフォー(Phở Gà)が登場した。当時、農作業に使う牛は食用には限りがあり、また冷蔵庫がなかったため、月曜と金曜は牛肉が売られず、代わりに鶏肉を使ったのが始まりとされる。鶏ガラスープは淡泊で、牛骨スープとは比べ物にならないと当初は人気がなかったようだが、次第に定着した。
ジュネーブ協定によりベトナムが南北に分断された1954年、ハノイからサイゴンに移住する人々が南部にフォーをもたらした。牛の各部位を一緒に煮込んだのがハノイ風だが、サイゴンでは主に5つ(半生、湯がいた肉、バラ、肩バラ、スジ)のオプションで売られ、希望すると牛脂入りスープが添えられた。
また1980年代まで配給制度(バオカップ/Bao Cấp)だったハノイでは、「具なしフォー/Phở Không Người Lái」が現れ、うま味調味料が使われるようになった。ベトナム戦争後にアメリカ、フランス、カナダ、オーストラリアへの移住や、留学・労働輸出でロシアやポーランドに渡った人々によって、フォーは世界に広まっていく。
北と南でスープが違うフォーの作り方
フォーの決め手となるのは、牛骨からとるダシだ。新鮮な骨を塩、酢、ショウガ、酒などに漬けて洗い、臭みをとる。さらに湯通しして洗った牛骨を焼き、肩バラ肉やスジ肉と水、塩、氷砂糖を入れて4時間以上、長い時には一晩かけて煮込む。肉は45分ほどで取り出し、丸ごと焼いたタマネギとショウガ、シナモン、ブラックカルダモン、トウキシミ、コリアンダーの種、白コショウ、塩、氷砂糖等と一緒に煮込む。とくにハノイでは、スープの旨味と香りを決めるのは牛骨だけでなく、日本では釣りのエサにされるスジホシムシ(Sá Sùng)を乾燥させたものが入っている。濾してスープが完成したら、魚醤ヌックマム(Nuoc Mam)やうま味調味料などで好みの味に調える。
サイゴン風のスープは、北部に比べて少し濁りがある。牛骨以外に鶏ガラも加え、スルメや八角、クローブと一緒に煮込むのが特徴で、甘みとコクのある仕上がりとなる。うまみ調味料は基本的に入れない。
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