メディカルトーク 肝硬変や肝臓がんを引き起こすことも。/「慢性B型肝炎」は早期発見&予防が大事

メディカルトーク

症例

52歳男性。10年前、ウイルス感染を意味する「HBs抗原陽性」を指摘された。昨年より皮膚が黄色くなり、腹部が張り、下肢の浮腫(むくみ)があったが仕事が多忙で放置。吐血したため受診すると、食道静脈瘤破裂を伴う末期肝硬変と診断された。

今回のドクター

吉田周平医師/ロータスクリニック

① 「慢性B型肝炎」ってどんな病気?

肝硬変・肝臓がんを引き起こすウイルス感染症です。肝硬変末期になり初めてB型肝炎ウイルスの感染が判明する場合も多いです。医療の進歩により肝臓がんの原因1位であったC型肝炎は根治できる時代になりましたが、2位のB型肝炎は根治治療法が未だ確立されていません。

② どうやって感染するの?

分泌液や血液から感染します。最多要因は、母から子への出産時感染です。ほかに性交渉、注射針の回し打ち、針刺し行為があります。汚染された歯ブラシやカミソリも感染の可能性があるので、感染予防対策が不十分な海外の床屋でのひげそりなどは避けた方が良いでしょう。

③ 死に至ることも

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。B型肝炎も自覚症状に乏しく、体のだるさなどの症状が出た時点ですでに肝硬変へ進行している恐ろしい病気です。最終的には黄疸・浮腫が出現し、腹水貯留や食道静脈瘤破裂により死に至ります。健康診断による早期発見&予防が大変重要です。

④ 内服薬で進行を阻止

慢性B型肝炎は肝硬変や肝臓がんへ進行すると対症療法しかなく完治困難ですが、早期発見すれば「核酸アナログ製剤」という内服薬を用いてB 型肝炎ウイルスの活動性を抑え、進行を阻止できます。ただ、この内服薬を一生継続して摂取する必要があるのが難点です。

⑤ 予防接種が重要

根治治療が確立されていない現状ではB型肝炎ウイルスの感染予防が最も有効的です。ワクチンで中和抗体(HBs抗体)を体内に作り感染を予防します。日本は任意接種ですが、HBs抗体を身につけ憂いない海外生活を送ることをおすすめします。
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