ベトナムの日本人/河田恵美さん/翻訳家

身近にあるもので暮らしや心を豊かにできる! 肌に優しい手作り石けんで魅せられたベトナムの天然素材の力

IMG_8877-1 女心をくすぐるシンプルで可愛らしいパッケージに、「Handmade」と「100%Natural」の文字。ベトナム中部のショップで取り扱われているこの「サポ/SAPO」ブランドの手作り石けんは、ホイアンで翻訳業を営む河田恵美さんの手で作られている。 「最初は家庭で使うために作っていたんですが、友人にあげると好評で、商品化を勧められました。天然素材の石けんが手に入りにくいベトナム中部で、現地の人に使ってもらいたいという思いもありましたね」と語る。 オリーヴオイルやココナッツオイルといった植物性油やハーブなど天然素材だけを使用し、2014年の販売開始以来、着実に評価を得ており、今ではダナンの5つ星ホテルでも販売されている。 畑違いの石けん作りにのめり込んだのは、現地のJICA隊員から廃油を利用した石けんの作り方を教えてもらったことがきっかけだ。 「来越以来ひどい手荒れに悩まされていたんです。市販の食器洗い洗剤やボディソープなどには、油と水を混ぜ合わせたり汚れを落とす効果を上げるために合成界面活性剤が配合されているのですが、ベトナムの洗剤は含有量が多いようで、逆に肌を破壊してしまうんですね。手作り石けんで食器を洗うようになると、うそのように改善されました」。 素材ひとつで石けんの肌への影響が全く違うことを知った河田さん。時を同じくして生まれた長男が自分同様に肌が弱く、アトピー体質だったことも石けん作りを後押しする。 「ここホイアンはないもの尽くし。ないなら自分で作ってしまおうと。日本にいたら、こんな発想は生まれなかったでしょう」。 興味のあることはとことん追求したくなる性分。根っからの“文系人間”だったが、本業の傍ら1年ほどかけて石けん製作に必要な化学知識などを調べ上げ、試行錯誤を繰り返した。河田さんの石けんは、製作に1ヶ月以上の時間がかかるが、熟成過程でできる天然の保湿成分、グリセリンがたっぷり含まれる「コールドプロセス」という伝統的な製法を採用。配合されているハーブなどはベトナム中部産のものだけだ。 「ベトナムには健康にも肌にも良い天然資源が豊富にあることを、石けんを通して知ってもらいたいという思いがあります。肌のトラブルを抱えたベトナム人は多く、高価な輸入化粧品を使っている人もいますが、大昔から人間が培ってきた自然の素材を使う知恵、お金をかけずに身近にあるもので暮らしや心を豊かにすることができるということを多くの人に気付いてもらいたいんです」。 こうした石けんづくりを通して、オーガニック製品や環境保護に関心のある人たちとの出会いがあり、2014年の「ホイアン日本祭り」では石けん講座を開催。その翌年には地域の子ども向けに廃油石けん作りを紹介した。 「今後ますます、廃油のリサイクル石けん作りなどを通じて環境保護や天然素材の効果、健康への影響などを、現地の人にシェアできるような活動をしていきたいと思ってます。今は自宅でコツコツ作ってますが、いつか工房を建て、見学や石けん作り体験を通して地域に環境保護の根を育てていきたいですね」。
河田恵美 かわだめぐみ 京都府生まれ。大学卒業後、コピーライターなどを経て、2009年7月からホイアン在住。翻訳業の傍ら、石けんの手作りを続け、2014年よりナチュラルハンドメイドの「サポ/Sapo」ブランドとして販売。 Facebook:SAPO - Natural Handmade Soap Hoi An
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