メディカルトーク/第117回「熱傷」(やけど)は応急処置が肝心/冷やし過ぎないよう注意して!

メディカルトーク

症例

3歳男児。家でポットが倒れ、お湯が右腕から手背にかかった。直後に水で冷却し受診。10×5 cmの発赤を2ヶ所、数ミリ大の水疱を3ヶ所認めた。抗生剤含有軟膏を塗布して経過を見たところ、2週間後には瘢痕を残さず治癒した。

今回のドクター

東京インターナショナルクリニック 院長 小林直之

①「熱傷」ってどんな病気?

火炎、お湯や油などの熱、化学薬品、電気、放射線による接触で起こる皮膚などの組織損傷を言います。通称はやけど(火傷)。ハノイなど北部では冬季に気温10度以下になり、暖房、火やお湯を使う機会が増えるので注意が必要です。歩道に垂れる電線やバイクのマフラーへの接触も危険です。

② 症状に応じて3段階

熱傷は、次の3段階に分けられます。【Ⅰ度】表皮熱傷と皮膚の発赤。【Ⅱ度】部分層の熱傷、水疱(水ぶくれ)を形成。【Ⅲ度】皮膚全層の壊死。入院治療が必要となるのは、中等症(Ⅱ度で体表面積の15~30%、またはⅢ度2%~10%)、重症(Ⅱ度30%以上、またはⅢ度10%以上)、顔面、手、足、会陰部、気道熱傷、化学損傷、電撃症などです。深達性Ⅱ度以上では、瘢痕(はんこん)・ケロイドを残す可能性が大きくなります。

③ まず熱源を遮断、そして冷やす!

毛髪、衣服が燃えた場合、周囲に水がなければ地面に転がり消火します。次に創を水道水やシャワーで冷やしてください。直後の冷却は疼痛や浮腫予防に有効ですが、長くても30分程度。氷は凍傷を招くため使用を避けます。小児では過度の冷却が低体温、意識障害や不整脈を起こすので要注意。

④ 経過観察で迷ったら医療機関へ

創の異物は除去し、化学熱傷では十分に洗浄します。消毒液は組織を傷つけるため使用しないという意見が多く、水疱(水ぶくれ)を温存するか、除去するかは結論が出ていません。重症熱傷や感染の場合には抗生剤を投与します。また、食品用ラップで患部を被覆して重度の敗血症を起こす例がありますので、安易な使用はやめましょう。迷った場合は医療機関への受診をお勧めします。
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