ベトナムの日本人/丹羽隆志さん/建築家

べトナムの風景を担う作品を。 現場に柔軟に対応しながら緑あふれる空間づくり

Niwa-Takashi 「前面の木を切れないかと相談されましたが、あえて大木を活かせるデザインを提案しました。朝、路地から出てくるおばちゃんが木が陰を落とした建物を見て、『デップクアー(きれいね)』と言って通り過ぎたときがうれしかったですね」。 まるでわが子をみるように温かいまなざしを向けながら、完成間近の建物を案内してくれたのは、ベトナムの現代建築を牽引する「ヴォ・チョン・ギア・アーキテクツ」でハノイ代表を務める丹羽隆志さん。彼が手がけているハノイ・ドンダー(Dong Da)区にある日系照明メーカー代理店のショールームは、テラコッタタイルで四方を覆った独特の雰囲気で、そばに立つ大木の背景としてうまく溶け込んでいる。夜はライトアップされ、都市の中で照明器具のように存在感を放つ。 マレーシアで日系工場の設計監理を終えた後、高専時代からの友人だったギア氏に誘われパートナーとして来越して5年。幼稚園やリゾート施設など、すでにいくつものプロジェクトに携わってきた丹羽さんが、設計する際にこだわっているのは、このように周辺の環境や緑を取り入れることだ。さらにサステイナビリティ(持続可能性)も重要となる。 「塗装が多いベトナムの建物では、汚れたら塗り替えられてしまいますが、そうではなく、日本の古建築のように歳月を経てより味わいを増す自然素材を使うようにしたいです。ハノイの湿気は厄介です。カビとの戦いとなるので、通風や採光を一番に考えます」。 ふと、工事中のショールーム内部で丹羽さんが一箇所の手すりに目を留めた。数センチ長いため、壁にくっつきすぎているという。「手すりは手すり、壁は壁というように、『縁を切る』必要があるんです」。 素人目には見過ごしてしまうような細かい点について、修正の指示を出すと「なんでそんなに面倒くさいことをするんだ」という反応が返ってくることも。ベトナムで建築家の意向を理解しようとする現場監督になかなか出会えないのが目下の悩みだ。日本では、同じ建築学科で設計、施工、都市計画をひと通り学ぶが、ベトナムでは入学時から専門が独立しているため、建築家の意図に寄り添えるエンジニアは非常に稀だという。 さらに、行政のあいまいな基準に翻弄されたり、近隣住民ともめたりと、なかなか思うように進まないことも。それでも丹羽さんは、デザインを通して貢献できることの多いベトナムでの活動に大きな意義を見出している。 「ベトナムの街づくりはまさにこれからです。建築を通じて街や国の発展を具体化していく、日本の高度成長期を支えたような『古き良き時代の建築家』がまだまだ必要とされています。例えば、これから鉄道が開通すれば、駅ができてその周辺が開発され人が歩くようになります。街の変化に携われる機会がベトナムにはたくさんあるんです」。 自然と人が共生する環境建築を今後も進め、ベトナムの風景をつくる後世の手本となるような建築を残したい、と丹羽さんの決意は固い。
丹羽隆志 にわたかし 1979年石川県生まれ。岡部憲明アーキテクチャーネットワーク勤務を経て、2010年よりハノイ在住。現在、「ヴォ・チョン・ギア・アーキテクツ/Vo TrongNghia Architects」パートナー兼ハノイオフィス代表を務める。 ウェブサイト:http://votrongnghia.com
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