ベトナムの日本人/岡田健一郎さん/ベトナム航空パイロット

パイロットに憧れて40年、副操縦士になって20年 ようやく叶えた機長の夢。日本人だからこそできることを

DSCF9225re 「今日もよろしく頼むな。頑張ろうな」。 青色の機体に声をかけ、仲間を労うようにぽんぽんと手を置く。多くの命を預かる重圧をパワーへと変える、フライト前のおまじないだ。 ベトナム航空初の日本人機長に就任した岡田健一郎さん。「機長になる最後のチャンスに賭けたい」という強い決意とともに2010年にベトナムへ。くじけそうになったときもあったが、昇格試験に向けて猛勉強。来越5年目となる今年1月、ようやく念願の機長に就任した。その日の想いをかみ締めるようにこう振り返る。 「家に帰って、これまで使っていた肩章をテーブルに置き、機長の証である4本ラインの肩章を手に取った瞬間ですね。『ああ、機長になれたんだ』と。色んな思いが込み上げて、気付けば涙が流れていました」。 故郷・鹿児島空港から飛び立つ飛行機を見てパイロットの夢を抱いて40年、副操縦士になって20年。そして今、機長になって半年が過ぎた。  副操縦士時代、「夢は諦めなければ叶う」と、日本人学校の子どもたちに語ったことがある。 「『機長の夢は諦めよう』と思うたびに、自分が言った言葉が頭をよぎるんです。『夢は叶う』。そう胸を張って言える日がきて、正直ほっとしています」と笑顔を見せる。 大きな重圧に押し潰されそうになることもあるが、ともに働くベトナム人の人懐っこさに何度も救われているという岡田さん。 「肩書きによる垣根が低く、上下関係が日本ほどない。「オカダ」なんで『コカダー』(冷たいコーラ)なんてニックネームで呼ばれていますし。こんなこと日本じゃありえないですよ!」と大笑い。「でも」と間を置き、「思ったことを率直に言い合える。そんな関係が心地良くて、気に入っています」と嬉しそうに語る。 もちろん、苦悩もある。課題として挙げたのは、ベトナム人副操縦士への指導。機長と副操縦士でフライト中の様々なことを決定するが、全てを委ねられることも。そんなときは、「大切な家族や友人が乗っている場合、どう判断するか」と、彼らがイメージしやすいよう聞き返す工夫をしている。仕事上の座右の銘は、山本五十六の名言から「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、誉めてやらねば、人は動かじ」。 「地上職も含め、僕らはいわば『運命共同体』。威圧的な態度をとるのではなく、風通しをよくし、チーム一丸となって業務を遂行できるよう努めるのが機長の役割だと感じています」。 年配の日本人女性から「初の海外旅行で気持ちが張り詰めていた中、日本語のアナウンスを聞いて安心しました」と涙ながらにお礼を言われたことがきっかけで、「日本人」機長としての自身の役割にも気付かされたという岡田さん。 「自分が飛行機を操縦しているから大丈夫」。そんな大きな安心感を与えられるような機長を目指し、今日も大空へと飛び立っていく。
岡田健一郎 おかだけんいちろう 1967年生まれ、鹿児島県出身。高校卒業後、海上自衛隊にて航空機整備員として勤務。飛行学校で事業用操縦士のライセンスを取得し、「日本エアーコミューター」と「スターフライヤー」での勤務を経て、2010年よりベトナムへ。2015年1月、日本人初の機長に就任。
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