伊藤忍のベトナムめし大全/第74回 ハイフォン風揚げ春巻き/Nem Cua Bể Hải Phòng

伊藤忍のベトナムめし大全/第74回 ハイフォン風揚げ春巻き/Nem Cua Bể Hải Phòngハイフォン風揚げ春巻きは、米麺ブンや生野菜と一緒に、ヌックマムの甘酸っぱいタレに付けて食べるのが主流

「揚げ春巻き」が、地域によって違いがあるのをご存知ですか? 今回は北部の港町、ハイフォン(Hai Phong)の揚げ春巻きをご紹介します。

ハイフォン風の春巻きの前に、まずはハノイやホーチミン市で食べられているスタンダードな揚げ春巻きについておさらい(第6回目でご紹介しました)しておきましょう。

揚げ春巻きはベトナム語では、北部は「ネムザン/Nem Ran」(Nem=肉や魚介などを小さくして調味料や香味野菜を混ぜてから、形作って加工した食品。Ran=油で揚げる)と呼ばれ、豚や海老のミンチ、蟹のほぐし身、刻んだ香味野菜、きくらげ、にんじん、くず芋などの野菜、調味料を混ぜた生地をライスペーパーで10㎝前後の筒状に包み、油で揚げて作る料理です。南部では、「チャーヨー/Cha Gio」(ここではCha、Gioともに、Nemと同じような意味)と呼ばれます。具材は北部と同様ですが、くず芋でなくタロ芋を入れることもあります。直径15センチ程の小さなライスペーパーで生地を包むため、長さ5~6㎝と北部よりも小さめ。北部では米麺ブン(Bun)と生野菜と一緒に、魚醤ヌックマムのタレに付けて食べたり、または焼いた肉や豚のつくねと一緒に食べたりするのがポピュラーです。一方南部では、揚げ春巻きをリーフレタスでたっぷりのハーブと一緒に包んでからヌックマムの甘酸っぱいタレに付けて食べたり、米麺ブンの上に揚げ春巻き、大根とにんじんのなます、生野菜とハーブをのせ、ヌックマムのタレをかけてあえて食べたりしています。

ハイフォン風の春巻きは「ネムクアベー/Nem Cua Be」(Cua Be=海の蟹)と呼ばれています。生地の具材は他の地域と同様ですが他の地域では淡水の蟹を使うのに対して、港町ハイフォンでは海の蟹や海老をたっぷり加えます。また、蟹や海老は肉の生地には混ぜるのではなく、ライスペーパーで肉と一緒に包むため、食べると中から蟹と海老がたっぷりと出てきて、港町ならではのリッチな感じのものもあります。また、「ネムブオンクアベー/Nem Vuong Cua Be」(Vuong=正方形)と言われることもあり、筒型でなく分厚い正方形に包むので、他の地域と見かけが大きく異なります。

ハイフォンの街中のチャンニャットズアット(Tran Nhat Duat)通りには、この春巻きだけで30年営業している有名店があり、その並びにも同様の店が何軒も並んでいます。

Vietmeshi201503 (1)ハイフォン風揚げ春巻き1つで、他の地域の春巻きの2倍ぐらいのボリューム

伊藤忍 いとう しのぶ ベトナム料理研究家。2004年より日本にてベトナム料理教室『an com』を主宰。ベトナム料理店を広めるために料理教室のほか、テレビ、ラジオ、雑誌、書籍などで幅広く活躍中。 ウエブサイト:www.vietnamfoodnet.com
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