ヴィジュアル☆ベトナム/ベトナム仏教ポップのショッピング/SHOPPING FOR VIETNAMESE BUDDHIST POP

Photo © Sue HajduPhoto © Sue Hajdu visual引越しを終え、ポップな内装を少し変えようと、仏具店に行くことにした。サイゴン華人街の中心、チャントゥー通りとハイトゥオンランオン通りの角に「タンタン/Tan Tan(新新)」という店を見つけた。 狭い店の奥へ進んで、山積みになった鏡を物色し始めた時、真珠のような銀色に光る、少年のような顔立ちの観音様の絵が私の目を捉えた。英語を話す店主の息子フン(Hung)がやって来た。 「家の中を平穏に保ってくれます。争いごとは起きません」。 なるほど、これが必要な人は多いかも! 店先には、丸々と太り、いつも笑顔で幸せを届けてくれる弥勒菩薩の像がある。別の鏡には、戦士らしい3人が描かれていた。「三国志時代の関羽(Quan Vu)と劉備(LuuBi)、張飛(Truong Phi)です。中国映画に良く出てきます。こちらの自然現象と悪霊を支配する神、北極紫微大帝(Bac CucTrung Tien Tu Vi Dai De)は、家の前に祀られます。この神も中国映画でよく見ます」。私はうなずくだけだった。中国映画は見ないし、正直言って頭が混乱し始めていたのだ。 仏教に関する本は多く読んだが、これはまた別ものだ。フンによると、仏教徒なら誰でも知っているし、キリスト教徒が祭壇の飾りを買いに来ることもあるが、ここでは仏教関連の商品しか売っていないという。フンと、1982年から店をやっている母親は2人とも中国語が書けるため、これらの神の漢字表記を教えてくれ、ウィキペディアで調べるのを手伝ってくれた。 だが私が探しているのはもっとシンプルな、フエなどで見かける屋外の祭壇に祀られる馬などだ。知性を授けてくれるし(これも良いご利益!)、すごく可愛らしい。ここでは観光客も買物をするそうで、人気商品は八卦鏡や、彼らが「曼荼羅」と呼ぶライトだ。渦巻くLEDの飾りが神の背後で「後光」を放ち、来世の印象を与えてくれる。 これらを部屋の飾りに使うのは失礼にあたるか、フンに再確認した。答えは「問題ありません」。清く神聖であるには、寺で魂を吹き込む「開光」と、片目の像にもう1つの目を描き入れる「点眼」が必要という。サイケな「曼荼羅」等は、祭壇に視覚的な効果を与えるだけで、ただのオブジェクトに過ぎないのだ。 タンタンは、家族や商売の祭壇を一新するテト前に繁忙期を迎える。旧年にお祓いしたものは寺に持って行くか処分し、新しいものと取り替える。テト前に家中を大掃除し磨き立て、ペンキ塗りや買物にいそしみながら、買うことに決めた新しい馬の神と、突飛な色の蓮のランプの置き場所を探そうと思う。

「曼荼羅」のディテール© Sue Hajdu「曼荼羅」のディテール© Sue Hajdu

Sue Hajdu スー・ハイドゥー オーストラリア人文筆家、和英翻訳者、写真家。シドニー大学日本学の学士号、同大学院視覚芸術の修士号をもつ。 ベトナムと日本でアーティストとして15 年ほど活動。 www.suehajdu.com Tan Tan ( 新新) 39 Trang Tu St., Dist. 5, HCMC
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