ベトナムの日本人/鈴木朋美さん/日本学術振興会特別研究員DC

ベトナム考古学が「好き」だから、研究を始め ベトナムが「好き」だから、研究が続けられる

撮影/勝恵美 japanese201501 ベトナム考古学研究を始めて5年目の鈴木朋美さん。屈託のない笑顔が人を惹きつけ、研究仲間のベトナム人だけでなく、初対面の人も話しやすい親しみを覚える。しかし、その温かい雰囲気の中にも研究者としてぶれない芯の強さを感じさせる女性だ。現在、日本学術振興会特別研究員DC(博士課程)として、中部の各省立博物館で、サーフィン文化(中部に存在した初期鉄器時代の考古文化)の遺物観察、図の作成、写真の撮影などを実施している。 近年、目覚ましい進展を見せるベトナム考古学。これまでベトナムの遺跡からは、ローマのコインや、インド・中国との関わりが深い遺物が多数発掘されており、ベトナム考古学の魅力を、「多国との繋がりを感じられるところ」と鈴木さんは語る。かつてのベトナム考古学は、「自国のアイデンティティの確立を促すもの」と位置づけられるが、 「現在のベトナム考古学は、文化の繋がりを認めベトナムの過去の魅力を引き出すような研究にシフトしています」。 ベトナムにおける研究環境は十分とは言えない。「ある遺物の図が必要な場合は、それが収蔵されている博物館に何度も足を運び、自分で一から図を作る必要があります。また、発掘調査の際に場所や時期によっては、蚊に100ヶ所以上刺されたり、貯めた雨水をシャワー代わりにする生活が3週間続くことも。辛く、研究そのものを何度も辞めたいと思ったことがあります」。 そんな心が折れそうな時に思い出すのが、修士課程1年目、修行のつもりで1ヶ月間ベトナム南部の遺跡巡りをした時の研究仲間からの一言だ。当時、ベトナム語が話せなかった鈴木さんをフォローするために、現地の調査仲間の男性が同行してくれることに。バスを乗り継ぎ6時間ほどかけて辿りついたとある地方の博物館は、長い間、手を付けていなかったような状態で遺物が保管されており、収蔵庫に入るのを躊躇してしまうほどだったそう。それでも「自分の目で見たい」との思いが勝り、過酷な暑さの中、遺物を手に取り真近で観察できたという。その時、この様子を見ていた彼から発せられた言葉が、「朋美は本当にベトナム考古学が『好き』なんだね」。 「彼の言葉を聞いて、『そうか! 私はベトナムの考古学が好きだから、頑張れているんだ』と思えました。くじけそうな時に、彼をはじめ、外国人の自分を分け隔てなく受け入れてくれる多くの仲間のことを思い出すと、この人たちの国のために頑張りたいと思えてきます」。 そしてもう1つ、「『好き』にもっともらしい理由はなくてよい」という恩師の言葉も思い出すという。 人に感謝し、謙虚に学ぶ姿勢。これは、先人の文化を尊重し、地道な作業を丁寧に続けられる考古学者としての素質に通ずるものなのだろう。そんな鈴木さんの元には、地方の博物館から、近い将来に発掘調査を行ってほしいという声が寄せられている。
鈴木朋美 すずきともみ 1985年、愛知県生まれ。同志社大学文学部在学中に早稲田大学に留学。現在は、早稲田大学文学研究科・人文科学専攻・考古学コースの博士後期課程に在籍。2013年から日本学術振興会特別研究員DCとして、ハノイに在住。現在、ハノイ国家大学にて研究を進めている。
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