伊藤忍のベトナムめし大全/第69回 クレソンと牛肉のサラダ/Xà Lách Xoong Trộn Thịt Bò

Vietmeshi201410-00しっかりとドレッシングであえたクレソンは辛味も気にならず、もりもり食べられる

高原の街ダラットではその高原の涼しい気候で作る、野菜や果物などの栽培が盛んです。ダラット特産の野菜を使った料理の中でも私が大好きなのは、たっぷりの新鮮なクレソンと牛肉のサラダ「サラッソンチョンティッボー/Xa Lach Xoong Tron Thit Bo」(Xa Lach Xoong=クレソン、Tron=混ぜる、Thit=牛、Bo=肉)です。 この料理の主役のクレソンは、日本だと少量をステーキに添えるなどのイメージが強いですが、ベトナムではサラダやスープのほか、ゆでるなどして一度にたっぷり食べる青菜の一種といった扱いです。ベトナム南部ではクレソンは「サラッソン/Xa Lach Xoong」と呼ばれていて、Xa Lachは「サラダに使う野菜」の意味で使われ、Xoongはフランス語のクレソン「cresson」を発音した際のベトナム語表記とのこと。また、XoongはXongと書かれたり、XがSになることもあります。クレソンは涼しい所で生育するので、特に高原の町ダラットではよく採れます。ダラットに来たならば、その新鮮さから生で味わいたいものです。 このサラダはダラットの観光客向けの老舗レストランが、レタスと牛肉で作るサラダに生のクレソンを使用して作ったところ、それが人気で、他店でも同じスタイルでマネするようになったと聞きました。 クレソンは葉と茎を食べやすい長さにします。ベトナム人は生の玉ねぎの辛味を嫌うので、玉ねぎは酢や砂糖でもんだり、甘酢に漬けます。牛肉は下味を付けてから炒めるのと、酢を入れた湯でしゃぶしゃぶの様に茹でてから入れるスタイルがあります。ベトナムの牛肉は脂が全くなく、、ほぼ赤身で、独特の血生臭い匂いが強いので、酢で茹でると匂いが抜けて食べやすくなるのです。 サラダのソースはフレンチドレッシングのベトナムバージョン「Dau Giam(Dam)」(Dau=油、Giam=酢)を作ります。酢と油、塩を混ぜるのですが、南部だと砂糖を入れる場合が多く、油入りの甘酢といった味です。ベトナムのお酢はかなり酸味がマイルドなので、日本で作るフレンチドレッシングとはまた違った印象を受けます。これらをあえて盛り合わせれば出来上がり。 サラダなので元はベトナム料理なわけではないのですが、その独特の作り方やベトナムの調味料を使った味わいなどは、洋風のサラダとはまた違った魅力があるので、あえてベトナム料理、いや、ダラット料理としてご紹介したかったのでした。

Vietmeshi201410_01ダラットのクレソン。ひと束の量がかなりたっぷり

伊藤忍 いとう しのぶ ベトナム料理研究家。2004年より日本にてベトナム料理教室『an com』を主宰。ベトナム料理店を広めるために料理教室のほか、テレビ、ラジオ、雑誌、書籍などで幅広く活躍中。 ウエブサイト:www.vietnamfoodnet.com
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