ベトナムスケッチ > ベトナムコラム > 越の国のこんな法律 > ...

ある紛争事例④

タグ:
カテゴリ:越の国のこんな法律
更新:2014/06/13 – 10:00

編集部では、皆様からの情報をお待ちしています。情報掲載をご希望の方は、コチラまでご連絡を!

「ソフト料金20万US$及び米法賠償金等をあわせ、合計100万US$の支払いを求めます」。
 
強面の越捜査役人を伴い、突如来社した米籍Y社担当者に詰め寄られた日系製造業X社。実はこの半年前、X社従業員Aは社内の自分用PCにY社ソフト試用版をダウンロードし、海賊版ソフトで購入版へアップグレード。そのままAは半年間、同ソフトを使い続けました。
 
本件はソフト内容(業務関連性)、同試用版頒布状況、海賊版性能、社内従業員用PC管理、従業員監督・教育、事後交渉、事後的証明可能な関連証拠など以外に、法的論点も複雑に絡みます。ただ決定打となったのは、話し合い等の度に作られた議事録。1度署名・押印した文書の「意思」の事後否定は、まず不可能です。判例集積が無く、法解釈研究もほぼないベトナムでは、紛争で生じた法的論点の対立結果が想定不可能なことが多く、結果、一応論理的な繋がりを持つ「文書」の役割が極めて絶大です。
 
今回の話は知財・労務・賠償論をはじめ、論点が満載ですが、得るべく教訓は「署名・押印の危険性」に尽きます。度胸さえあれば、(専門家への相談前は)如何なる事態でも議事録を含む書面等への署名押印を断固拒否できるはず。心構えとして、この国には法律に全く馴染みがないか、逆手に取る人しかいないことを忘れてはなりません。

野口 真吾 のぐち しんご
慶応義塾大学卒、第二東京弁護士会、渥美坂井法律事務所所属。2012年に韓国系最大手・JPに参画、越内の執務開始。翌年3月より、ヴァン弁護士(元計画投資省、夫は司法大臣)所長のAPACへ出向。

掲示板ご利用の前にベトナムスケッチ掲示板ガイドラインをご参照ください。投稿にはFacebookアカウントが必要です。アカウントはFacebook公式サイトにて無料で取得できます。※編集部への質問や問い合わせに関してはコチラからどうぞ。

関連ベトナム記事

労働組合との付き合い方 労働組合との付き合い方

実は新労働関連法制下では、外資を含む全ての会社に労働組合もしくは上級労働組合への財源支出義務が課せられています。 社会主…

ベトナムでの住宅購入 ベトナムでの住宅購入

ベトナム生活が長い方はベトナムでのマイホームの購入も検討されたことがあるかもしれません。また、ベトナムでは、2008年以…

ある紛争事例③ ある紛争事例③

越境取引や外国当事者による取引では、国家権力たる司法権の影響を最小化する要望も多く、その際に有効なのが仲裁機関の利用です…

ベトナムでの結婚・離婚 ベトナムでの結婚・離婚

ベトナムで生活していると、日越カップルにしばしば遭遇します。年配の日本人男性が若いベトナム人女性とめでたく結ばれたという…

ベトナムの電力事情 ベトナムの電力事情

年末はイルミネーションでホーチミン市の街が煌々と照らされていました。電力不足・停電は、企業の経営上の課題としての地位が近…

ある紛争事例② ある紛争事例②

しばらく冷え込んでいた日系企業による大型建設投資ですが、実は水面下で多数の日系中小建設業者が涙を呑んだことは、知る人ぞ知…

ある紛争事例① ある紛争事例①

昨今、中小規模投資も進出著しいベトナムですが、規模の如何にかかわらず、原則手続は同様です。進出支援ビジネスはいまだ活況で…

ベトナムの新労働法における労働者の権利 ベトナムの新労働法における労働者の権利

ベトナム人は一般に勤勉とされます。出産間近まで大きなおなかで働く女性も珍しくありません。祝日は少なく、ベトナム人労働者の…

新興国における企業の紛争解決 新興国における企業の紛争解決

昨今、新興国で日系企業が紛争に巻き込まれるケースとしては、対ローカルや外資企業、はたまた政府等、様々な背景が増え、内容・…

ベトナム役人の考え方 ベトナム役人の考え方

私の出向事務所の沿革上、ベトナムの役人と常日頃から付き合いますが、お客様からその関係や運用について、よく苦情をお聞きしま…

不動産にまつわる話 不動産にまつわる話

社会主義国家ベトナムは、私人の土地所有を認めない建前ですが、土地所有権に近い「土地使用権」を創設して、各種不動産利用を通…

外国人学校とベトナム人 外国人学校とベトナム人

最近では、ベトナム国内に多くのインターナショナルスクールや日本人学校ができています。こういった外国人学校は、外資100%…

WTOコミットメントとは? WTOコミットメントとは?

2007年、ベトナムは世界貿易機関(WTO)への加盟に際し、大きく分類して①関税の引き下げ、②サービス分野の開放、③農業…

偽ブランド品購入のリスク 偽ブランド品購入のリスク

ルイ・ヴィトン、グッチ、エルメス…。街中を歩けば、高級ブランドのロゴをつけたバッグや財布が至る所で売られています。値段は…

あまり知られていない/インターンシップ制度の法的評価 あまり知られていない
インターンシップ制度の法的評価

昨今、外国人を含むインターン生の受け入れが増えているようですが、実は結構やっかいな法的問題をはらんでいます。 例えば、大…

VAT 還付を受けるには VAT 還付を受けるには

今回は、個人がブランド物などを購入した際の還付手続について説明します。 還付請求はベトナム国籍を有しない外国人に限られ、…

ベトナムにおける契約の締結に関する留意点 ベトナムにおける契約の締結に関する留意点

日本人がベトナムで契約を締結する場合、弁護士など専門家の目を通さないケースが散見されます。 これは、日本で契約を締結する…

意外と奥深い「VAT」 意外と奥深い「VAT」

ベトナムで縁の切れない付加価値税(VAT)は、除外項目以外の全取引における付加価値分に課されます。 例えば(当事者を単純…

気をつけたい比較広告 気をつけたい比較広告

日本では、自動車、清涼飲料、携帯電話の通信料金、生命保険料等の比較広告をよく目にします。これは、日本では比較広告自体は禁…

ベトナムにおける印鑑の意味 ベトナムにおける印鑑の意味

日本人に馴染みの深い印鑑制度は、ベトナムにも文化的に根付いています。現行法で、登録された印鑑を正式な(書面上の)意思表示…