ベトナムの日本人/難波由喜さん/ウズギャラリー主宰

天然のベトナム漆が生み出す光と影の世界観に魅せられて 「漆画に出会ったからこそ、16年もベトナムに居られた」

Interview_201405 「夜、一人でこのギャラリースペースにいると漆画が呼吸しているのを感じるんです」。   それを森林浴ならぬ漆浴だという難波由喜さん。現在、自宅を開放し、ベトナム天然漆画(うるしえ)ギャラリー兼教室「ウズギャラリー」を運営、自ら講師も務めている。ベトナム在住歴16年目を迎えた難波さんだが、もともとは1年間の駐在予定でベトナムに赴任。当時、想像以上の激務に心身ともに疲れ果てていたが、休日のギャラリー巡りが唯一の楽しみで、そんなある日「ベトナム漆画家・安藤彩英子」の展示会に辿り着いた。 「全く漆画についての知識がありませんでしたが、彼女の作品はとても魅惑的でした。どうしたらこんな風に影の中に光が描けるのかと。これまで見たどの絵画とも違う。この時、漆画と出会っていなければ、私はとっくに日本に逃げ帰っていたでしょう」。   数年後、難波さんは友人の紹介で安藤さんと偶然再会し、彼女の教室に通い始めた。 「ベトナムの天然漆画は、フランス植民地時代の印象派の影響を受けているため、アジアの『大胆さ』とヨーロッパの『繊細さ』を併せ持っています。豊かな色合いはベトナム漆の透明感から、複雑な質感は地層のように重なる漆層を研ぎだすことにより生み出されています」。   実際、漆画は使用する漆が天然か人工かで、仕上がりが大きく違う。 「完成直後の光沢の違いは言うまでもなく、天然漆で描かれた画は、完成後も呼吸しながら硬化していきます。硬化が進むにつれて透明感が増し、色は鮮やかになり、漆層の下に眠る素材が現れます。数ヶ月から数年は、時間の経過とともに作品の変化を楽しむことができます」と、ギャラリーの漆画を温かい眼差しで見つめながら、天然漆画の魅力を語る。   これほどまで奥が深い芸術様式だが、合理性を追求する世の流れに抗えず、天然漆画に明るい未来が保証されているとも言えないようだ。 「実感として、この数年で天然漆を供給する生産者や職人は減っているようです。漆にしても漆板にしても、目に見えて質が低下しています」。   この流れを何とか食い止めたいと、各所に相談に訪れるなど努力を重ねてきた。だが、専門家をはじめ、調査を受け入れる公的機関がベトナム側にないようで「このままではベトナム天然漆画の文化は廃れていくのでは」と肩を落とす。   それでも、「ウズギャラリー」には、これまで口コミ中心で200人にものぼる人々が教室を訪れている。個人レベルの活動とはいえ、同ギャラリーの存在は、「少しでも多くの人にベトナム漆の魅力を伝える」役割をしっかりと果たしているのだ。   漆教室の体験者にとっても、ベトナム天然漆画との出会いが、異国で頑張る心の励みになっているのかもしれない。
難波 由喜 なんば ゆき 福岡県出身。1998年に会社の業務で来越。その後、出産を機に退職し、専業主婦となる。子どもの小学校入学を機に2007年に「ウズギャラリー/UZU Gallery」(http://uzugallery.com)をハノイのスアンジエウ(Xuan Dieu)通り にオープン。2009年に現在の場所に移転、自宅を開放した漆教室を運営している。株式会社日本構造橋梁研究所に勤務。
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