ヴィジュアル☆ベトナム/1年ぶりのベトナムと、20年の後/ARRIVING BACK: AFTER A YEAR, AFTER 20 YEARS

_DSF3338 visual今年の2月、1年ぶりにベトナムへ戻ってきた。空港でビザを待つ間に同胞のオーストラリア人女性と知り合い、彼女が少し不安そうに見えたので中心街まで一緒にタクシーで行くことにした。ヴィナサンに荷物を積み、運転手に行き先を告げ、タンソンニャット空港と市街地をつなぐ動脈であるグエンバンチョイ通りへと出た。   大通りを進む中、旅行アドバイスをしようとこの新しい友人を見ると、彼女は眼を見開いて通りを見つめていた。この日はバレンタインデーかつ仏教徒の日で、通りは恋愛や別世界との任務にいそしむベトナム人たちで大混雑。ヘルメットは1000個のピンボールのようにゆっくり、もぞもぞうごめいている。私もこの様子に魅了された。世界で最もオートバイ化された国は、やはりいつも大胆なビジュアルの印象を与えてくれる。 12ヶ月。私がこの国と関わりをもって以来20年の間で、最も長くベトナムを離れていた期間。今回戻った時に、自分がどう反応するかを知るのが非常に楽しみだった。   その後の数週間、いつも同じ数少ないものが私の注意を引いた。オートバイの群れ、飲食店の多さ、人々の若さ、1区と3区を美しく飾る古いフランス建築、1区のあちこちに散らばっている公園などの整然とした場所。しかし、ベトナムの目利きが同調しそうな辺鄙なものには気づかなかった。   つまり、私の目に飛び込んできたのは、ごくふつうの旅行者が初めて訪れる時に見るものと同じだったのだ。20年の積み重ねの結果がこれとは。なんて平凡な!   私を強く刺激したものは他にもあり、これについて語らないのはもったいない。それは、サイゴン人がどれだけアンプ好きかということだ! まるで「Vui/ヴーイ(楽しい)」エネルギーのデジタル心臓の鼓動のように、この街にはテクノが轟き渡る。家電店のクリアランスセールでブンブン、朝6時20分の小学校でブンチャチャブン、公園ではエアロビ女性たちがブン、2、3、4。夕暮れ時に並ぶ100の挑発的な腰、その頭上をコウモリが回っている。なんと刺激的なイメージだろう。   公園のエアロビクスは無料サービス。大衆のために提供される素晴らしいシステムだ。だが列になって踊る彼女たちを見ても、単調作業にいそしむ「洗脳された」大衆の群れを私は連想しない。それが見られるのは中央線だ。何百万ものサラリーマンが一様にぞろぞろと歩道を歩き、最終電車で一緒に揺られて家に向かう。   タオダン公園のテクノは、これとは違う。女性は汗をかき、5、6、7、8! ひどいサウンドシステムから流れるカサついたテクノリミックスだが、それでも歌詞は聞き取れる。「俺の車で寝て、君を脱がす。俺の車で寝て、君を愛撫する」。1区の主婦たちは激しく腰を使っているが、彼女たちのほとんどは歌詞を知らないのだろう。でも、私にはわかる。   歌詞の意味を知らずに腰を動かすこの皮肉によって、色気とうぶの組み合わせが、押さえきれないベトナムのエロスだと気付く。だからこそ私は、景色だけでなく、音やにおいや味に20年もの間、魅了されてきたのだと。
Sue Hajdu スー・ハイドゥー オーストラリア人アーティスト、写真家、文筆家としてベトナムと日本で活動。シドニー大学日本学の学士号、同大学院視覚芸術の修士号をもつ。 ウエブサイト:www.suehajdu.com Facebook:Sue.Hajdu.Projects
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