ベトナムの日本人/高橋清洋さん/造園師

ベトナムの友の熱意に心を動かされ、日本庭園を完成。 「手と手を結ぶユートピアを作りたい」

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写真/大木宏之
「日本の恥になってはならない」   そう話す造園師の高橋清洋さんは、ホーチミン市のホックモン県にある「リンリンパーク」に、見事な日本庭園を造り上げた。日本では寺院や一般家庭など数えきれないほどの庭園を手掛けてきたベテランの高橋さんは約1年前、単身で来越。きっかけは日本で造園師を探していた「リンリンパーク」オーナーのゴー(Ngo)さんとの出会いだった。ゴーさんはボートピープルとして来日し、愛媛県で生活。数々の苦難を乗り越えた後、日越における事業で成功をおさめてきた。 「ゴーさんと私は年齢も近く、同じ愛媛に住んでいたという縁が引き合わせた。ゴーさんは『日本に恩返しがしたい』、『ベトナムのみなさんに素晴らしい日本庭園を見せたい』という熱い思いを持っていて、それに応えたかった。せっかくのこの出会いを自らの意志で切ってはいけないと思い、1人ででもベトナムに来ようと決心したんです」。   ゴーさんは本物の日本庭園にこだわり、「リンリンパーク」を造るために庭石4000t、槙(マキ)50本、220匹の鯉などを日本から送った。 「あまりにも素晴らしい材料に、本当に驚いた。ここまで本気で海外に庭園を造ろうと思う人はなかなかいないんじゃないかな」。   材料と土地を見ただけで、すぐに庭園の完成イメージがわいたという高橋さん。ホーチミン市の土は植物が育ちやすく、管理も難しくないそう。それを理解した上で、図面を引かずとも造園に取り掛かれた。しかし、庭造りのスタッフは全員ベトナム人。言葉の壁をはじめ、彼らの行動や非効率な作業方法に戸惑うことも。そんな時、高橋さんが取った手段は、「モノマネ」だった。 「作業をする時、彼らは靴を履かずにサンダルを履いていたんだよ。危険すぎて、日本では絶対に考えられない姿。彼らには見て覚えてもらう必要を感じたけれど、まずは自分が彼らのマネをしようと思った。自分もサンダルを履いて作業をしてみたのだけど、指先は傷だらけになったよ」。   危険を伝えるためにも体を張って伝える。そして、作業の仕方や道具の片付け方なども「見せて覚えさせること」を繰り返し行ってきた。 「今では阿吽の呼吸でこちらの考えていることを察してくれるほか、自ら動いてくれたりするようにもなった」。   言葉ができなくても、心と心で繋がっていると実感している様子の高橋さんだが、まだベトナム生活に慣れていないところがあるという。しかし、動じる様子は全く感じない。 「毎日が正月みたいな気分で、寝て起きるたびに『今日もめでたいな~』と思っている。自分は日本には帰らない。生涯ベトナムにいるつもり」。   そんな高橋さんの夢は、 「知り合った人と人の手を結べるような、日越の交流の場となるユートピアを建設したい」。   日本代表として、高橋さんはベトナムに素晴らしい桃源郷を造り上げてくれるだろう。
高橋清洋 たかはし きよひろ 1959年生まれ。愛媛県伊予市出身。11歳で盆栽に興味を持ち、以後、日本各地の庭を見ながら、独学で造園術を習得。29歳で独立、「高橋園」を経営。2013年5月に単身でベトナムへ。「リンリンパーク/Rin Rin Park」(26/11 Tran Van Muoi St., Xuan Thoi Dong Ward, Hoc Mon Dist. HCMC)に日本庭園を造る
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