ヴィジュアル☆ベトナム/ベトナムの芸術システムを支える3本の柱/VIETNAM’S ART SYSTEM: A BRIEF INTRODUCTION

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ホーチミン市現代美術館 ©Sue Hajdu

ハノイやホーチミン市の、特に中心街にある有名なギャラリーに馴染みのある人は多いだろう。これらは、芸術システムの最も目立ちわかりやすい一面だ。だが芸術システムとは正確には何なのか、その中をどのように進めば自分が求める作品にたどり着き、楽しめるのだろうか。

visualギャラリーは、3本の柱のうち最も普及している商業的な柱。2本目の柱は、現代美術協会だ。これらは元々、芸術家に対応し支援する共産主義的な手段だった。最近では、実際的な観点からいえば、アイデアを交換する同業者集団であり、会員はグループ展やワークショップに参加できる。   協会は国営で、支援する芸術はハノイやホーチミン市、フエにある国営の現代美術館で見られるような作品に近い。より年輩で定評のある芸術家、主に画家や彫刻家を支える傾向がある。これら芸術家の大半が数十年前に教育を受けており、その作品は現代的というより近代主義的。特に成功した人の作品は買い上げられ、美術館に展示される。もちろん、彼らの作品の一部はギャラリーでも販売されるので、柱が重複する部分もある。   美術館や芸術協会は、ベトナムの芸術システムにおける機構的な柱だ。特筆すべきは、日本などとは対照的に、ベトナムには民間の博物館や施設がない。ちなみに、美術大学もすべて国立だ。   長きにわたり、これがベトナムの芸術システムだった。何かが欠けていると感じるだろう。ベトナムのアーティストも強くそう思っていた。そんな状況で、彼らは自発的に空白を埋めようとする。何かが起こるのをただ待つ代わりに、自律的に創り上げるのだ。このような形で活動するアーティストは通常、「アーティスト・ラン・イニシアティヴ(Artist-Run Initiative /ARI)」と呼ばれ、日本にも多数存在する。   ここで大切なのは、通常は作品作りに専念するアーティストが、普通はギャラリー所有者やマネージャーや学芸員が行う作品の運営や組織を始めたことだ。ギャラリーや教会に依頼された案件のギャップを埋めることもある。ベトナムの場合、つい最近までこれらが意味するのは、会談やプレゼンテーション、非展示型の芸術イベント、読書室や図書館、ビデオや映画の上映会、コミュニティアートプロジェクト。つまり、芸術システムに欠けていて、アーティストが強く望み、何かが得られること全てだ。   営利目的のギャラリーの作品が面白くない、つまらない、あるいはいつも同じだと感じているのなら、このシステムの3本目の柱が楽しませてくれるだろう。彼らの活動はより現代的かつ多様で、大人も子どもも楽しめるイベントや、インタラクティヴなプロジェクトもある。   次号ではこれらイニシアティヴの歴史と、現在の活動が、どこで見られるかを紹介する。お楽しみに!
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コーヒー工場でのコミュニティーアートプロジェクトにおける、あるアーティストの作品 ©Sue Hajdu

Sue Hajdu スー・ハイドゥー オーストラリア人アーティスト、写真家、文筆家としてベトナムと日本で活動。シドニー大学日本学の学士号、同大学院視覚芸術の修士号をもつ。 ウエブサイト:www.suehajdu.com Facebook:Sue.Hajdu.Projects
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