No.038 櫓漕ぐ音
Tsutsumi Naruo
この10年余りの間に、メコンデルタでも着々とインフラ整備が進んでいる。
特に道路の整備、新設は急速でカントー(Can Tho)からヴィータン(Vi Thanh)間約60kmには幅30mの道路が、文字通り「一直線」に開通している。
かつてはバイクで1時間半かかったが、今では1時間。生活物資の流通や都市部へ出かけるにも、とても便利になったに違いない。
だが道路は水田を埋め立てて「一直線」に作られたため、村々を、そして水路を分断してしまった。田んぼに出るにも、ちょっとした用事で隣の家に行くにも、遠回りしなくてはいけない村人もいることだろう。
前は日よけ傘が並んでいた川沿いの市場も、次第に新しい道路沿いの屋根付きの建物へと移りつつある。水路を行く舟も、船外機の付いたものがごく当たり前になってきた。その分、メコンの人たちの暮らしも楽になってきたのだろうか。
ファインダーをのぞく時、かつての櫓を漕ぐ音や、しずくの音がふと懐かしくなる。
写真・文/つつみなるお
フリーランスフォトグラファー。1997年よりベトナム、主にメコンデルタ地方を撮影。
個展は2000年「メコンデルタにてpart1」、2004年「メコンデルタにてpart2」を実施
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