2013.11.24

チャン・フン・ダオ伝説を追え!

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日本で元寇があった後の1288年、元軍はベトナムへ攻め込んだ。この時、敵を撃退したのが軍師チャン・フン・ダオ(Tran Hung Dao)で、舞台はハイフォンのバックダン(Bach Dang)川(白藤江)だった。今回はこの戦いを振り返る。
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バックダン川を見渡す小山の頂上から作戦を指揮

ウボー山 Nui U Bo バックダン川は海に近く、潮の干満差が激しい。それを利用したチャン・フン・ダオは、満潮時に、川底に無数の木の杭を埋め込んだ場所へ元の船団を誘い込み、潮が引いて船が杭に引っかかったところへ攻め入った。元はこの敗北で、計画していた日本への3度目の侵攻を断念したといわれている。実は、日本にとっても英雄だったのだ。 彼が戦いを指揮したのがウボー山。現在は軍の施設のため立ち入り禁止だが、対岸のチャンケイン寺(右上)から全景が望める。 UBo杭を埋め込んだ場所はウボー山から少し下流にあたる、ハイフォンとクアンニン(Quang Ninh)省イェンフン(Yen Hung)県との境目あたりだ

住所:Nui U Bo, Minh Duc, Thuy Nguyen Dist., Hai Phong

元軍撃退のキーとなった杭はけっこう大きい

海軍博物館 Bao Tang Hai Quan 近年になり、クアンニン省のクアンイエン(Quang Yen)地区の畑などで大量の杭が発見された。科学的な鑑定により、13世紀のものと判明し、チャン・フン・ダオが埋めさせた杭と推定されている。 他にも、杭により身動きがとれない元の船団に攻め入る様子を再現したジオラマも展示されている。 OLYMPUS DIGITAL CAMERAクアンイエン地区には、今でも畑に突き出たまま残されている杭があるとか。相当の数を埋めたことがうかがわれる

住所:Pham Van Dong St., Duong Kinh Dist., Hai Phong 電話:(031) 381 4788 営業時間:(火~金曜)8:00~10:30 休日:土~月曜 料金:無料

国の英雄を祀るために祠を新設

チャンケイン祠 Den Trang Kenh バックダン川のほとりの、ウボー山を見晴らせる小山のふもとに、チャン・フン・ダオを祀るチャンケイン祠がある。彼を祀っていた祠は数度の戦争で破壊され、2005年、ハイフォン市民の悲願だった再建を果たした。 TrangKenh002チャンフンダオ祠ともよばれる。同一敷地内にチャンケイン(Trang Kenh)寺、レーダイハイン(Le Dai Hanh)祠と共に建つ

住所:Trang Kenh Village, Minh Duc, Thuy Nguyen Dist., Hai Phong 電話:なし 営業時間:7:00~11:30 / 13:00~17:00 料金:無料

救国の英雄が今では不妊や難産の神様に

キエップバック祠 Den Kiep Bac なぜかベトナムでは、元軍を率いたフビライ(Khubilai)は女性に祟る悪霊と伝わっている。そのため、元軍を撃退したチャン・フン・ダオは女性の守り神にして、不妊や難産の神様となった。彼が亡くなったハイズオン省の村に建てられた祠はいつも、多くの女性参拝客で賑わっている。 2013年11月5日現在、同祠は改築工事中。

KiepBac001立派な門構えの境内は、多くの参拝客で賑わう

KiepBac002本尊のチャン・フン・ダオ像

住所:Duoc Son & Van Kiep Village, Hung Dao Commune, Chi Linh, Hai Duong Province 電話:なし 営業時間:24時間 料金:無料

COLUMN : 先人にならった? それとも?

10世紀末、ゴー・クエン(Ngo Quyen/呉権)がバックダン川で南漢軍を破った際、同じ戦法をとったとされている。チャン・フン・ダオは先人にならったと考えられていたが、バックダン川周辺から出土した杭が全て13世紀のものと判明。後世になって書き記した歴史家が2人の戦法を混同したのでは、という説が支持を集めつつある。