ベトナムスケッチ > ベトナムコラム > 越の国のこんな法律 > ...
ベトナム役人の考え方

私の出向事務所の沿革上、ベトナムの役人と常日頃から付き合いますが、お客様からその関係や運用について、よく苦情をお聞きします。ただ、背景事情を紐解いて拝察するところ、当該役人の思考過程の検討が最も重要です。
この点、ベトナム政府は国民に最終責任を負い、国益に反する規制や運用は実行できません。もちろん(WTO等含め)世界との関係でベトナムに我慢が求められても、外国人はそのバランス感覚の理解が必要です。
外資はベトナムで「投資」をして初めて法人格が認められ、外国人は「投資」に必要な場合のみ労働が認められます。これは成長途上の新興国では当然で、越内法人を日本の枠組みで本社の「一支店」として人事等も考えることは、その位置付けを逸脱します。
外資から開放・運用明確化の要望が高い飲食・小売事業も、都市部の物価・賃金水準にかんがみて、越国民が生活の糧としやすい当該分野を政府が死守するのは、ある種合理的です。
自分と違う物差しを批判する前に、役人の思考過程を考察すると、必ず議論の糸口があります。一部企業を除き、グローバル化に出遅れた日本は今後も市場拡大を強いられますが、評価は分かれても歴史上、常にアジア最前線だった日本の後ろ姿を、ベトナム人はいつも見つめているのですから。
野口 真吾 のぐち しんご
慶応義塾大学卒、第二東京弁護士会、渥美坂井法律事務所所属。2012年に韓国系最大手・JPに参画、越内の執務開始。翌年3月より、ヴァン弁護士(元計画投資省、夫は司法大臣)所長のAPACへ出向。
Post Advert 570×75 Rotation
掲示板ご利用の前にベトナムスケッチ掲示板ガイドラインをご参照ください。投稿にはFacebookアカウントが必要です。アカウントはFacebook公式サイトにて無料で取得できます。※編集部への質問や問い合わせに関してはコチラからどうぞ。
関連ベトナム記事
労働組合との付き合い方
実は新労働関連法制下では、外資を含む全ての会社に労働組合もしくは上級労働組合への財源支出義務が課せられています。 社会主...
ベトナムでの住宅購入
ベトナム生活が長い方はベトナムでのマイホームの購入も検討されたことがあるかもしれません。また、ベトナムでは、2008年以...
ある紛争事例④
「ソフト料金20万US$及び米法賠償金等をあわせ、合計100万US$の支払いを求めます」。 強面の越捜査役人を伴い、...
ある紛争事例③
越境取引や外国当事者による取引では、国家権力たる司法権の影響を最小化する要望も多く、その際に有効なのが仲裁機関の利用です...
ベトナムでの結婚・離婚
ベトナムで生活していると、日越カップルにしばしば遭遇します。年配の日本人男性が若いベトナム人女性とめでたく結ばれたという...
ベトナムの電力事情
年末はイルミネーションでホーチミン市の街が煌々と照らされていました。電力不足・停電は、企業の経営上の課題としての地位が近...
ある紛争事例②
しばらく冷え込んでいた日系企業による大型建設投資ですが、実は水面下で多数の日系中小建設業者が涙を呑んだことは、知る人ぞ知...
ある紛争事例①
昨今、中小規模投資も進出著しいベトナムですが、規模の如何にかかわらず、原則手続は同様です。進出支援ビジネスはいまだ活況で...
新興国における企業の紛争解決
昨今、新興国で日系企業が紛争に巻き込まれるケースとしては、対ローカルや外資企業、はたまた政府等、様々な背景が増え、内容・...
不動産にまつわる話
社会主義国家ベトナムは、私人の土地所有を認めない建前ですが、土地所有権に近い「土地使用権」を創設して、各種不動産利用を通...
外国人学校とベトナム人
最近では、ベトナム国内に多くのインターナショナルスクールや日本人学校ができています。こういった外国人学校は、外資100%...
WTOコミットメントとは?
2007年、ベトナムは世界貿易機関(WTO)への加盟に際し、大きく分類して①関税の引き下げ、②サービス分野の開放、③農業...
偽ブランド品購入のリスク
ルイ・ヴィトン、グッチ、エルメス…。街中を歩けば、高級ブランドのロゴをつけたバッグや財布が至る所で売られています。値段は...
VAT 還付を受けるには
今回は、個人がブランド物などを購入した際の還付手続について説明します。 還付請求はベトナム国籍を有しない外国人に限られ、...
意外と奥深い「VAT」
ベトナムで縁の切れない付加価値税(VAT)は、除外項目以外の全取引における付加価値分に課されます。 例えば(当事者を単純...
気をつけたい比較広告
日本では、自動車、清涼飲料、携帯電話の通信料金、生命保険料等の比較広告をよく目にします。これは、日本では比較広告自体は禁...
ベトナムにおける印鑑の意味
日本人に馴染みの深い印鑑制度は、ベトナムにも文化的に根付いています。現行法で、登録された印鑑を正式な(書面上の)意思表示...