29屋的越南恋愛コラム／「恋人至上主義の原理で行動するベトナム人の、／ベタでベタベタな愛情」／第20回

愛ゆえに、まっしぐら

とかくベトナムの男性は、恋愛感情を相手や周囲に伝えるにあたり、並みの日本人よりもはるかに率直で情熱的なようだ。ちょっとでも、「お、いいね！」と思ったら、まず気軽にアプローチするし、結果が駄目でもあんまりくじけない。夜討ち朝駆けで猛アタックを繰り返し、めでたく獲物を射止めた後も勢いは止まらず。でかい花束を公衆の面前でプレゼントとか、本人に告げないでサプライズで会いに行くとか、食事のときは魚の小骨まで取り分けるとか。韓国ドラマか、全盛期の松方弘樹レベルの「ベタ」な仕掛けを、恥ずかしがらず大まじめに繰り広げるのである。挙句の果ては、「彼女の買い物につきあうから」という不急不要の用事のために、友人との先約をドタキャンしたり、ひどい時には仕事を欠勤したりという「やさしい」男も少なくはない。まあ、程度の差こそあれど、巷にあふれる恋愛のハウツー本を見る限りでも、こういう「お姫様扱い」というものは基本的に女性の大好物だそうなので、それさえやればモテ街道を爆走できそうな気がするのだが、はたして我々日本人も郷に入っては郷に従い、そのスタイルへ同調するべきなのだろうか？ 「ブレーキ」の正体こそ、「和」魂 その昔、平兼盛が『拾遺集』で「しのぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで」と詠んだが如く。あるいは武士道のバイブル『葉隠』において「忍ぶ恋こそ至極なり」と定義したが如く。日本人は、己の恋愛感情を、公の場で表明することに関しては実に慎重な民族で、時代が進んだ現代においても、そのあたりは変わらない。恋は魂を焦がす炎であり、運命を玩ぶ奔流でもある。その力に負けて己を見失い、人に不快感を与えるほどのノロケやいちゃつきや痴話喧嘩などを繰り広げ、その場の空気を変な感じにしたり、仕事に穴を開けたりして、「和」を乱すことこそ、日本人にとってもっとも許せない「罪悪」なのだ。よって、如何に南国のロマンスとは言えど、狭すぎるコミュニティ。知人に目撃されるリスクを思えば、自動的に後先考えて当たり前。人は己の「分」を越えてまで、そうそう気高くもなれない代わりに、とんでもないバカにもなりきれなるものでもない。バカップルに徹するのにも、ガッツと才能が必要なのである。もちろん、要所での気配りや演出は時に恋を潤おすし、相手を喜ばせたいという気持ちを汲み・汲まれることで思いやりの花も咲くだろう。しかし、刺激物の過剰摂取は、己と相手をもスポイルする「毒」ともなるので程々にするべし。何？「ひがむなよ、おっさん」だと？あえて言おう。それはひとえに「女性のグレード次第」であると。ちゃんちゃん♪