メディカルトーク/第83回 恐るべし小さな昆虫/ハネカクシ

メディカルトーク症例

40 代男性が来院。顔や腕に10cmほどの線状の腫れが見られ、ヒリヒリとした痛みが続く。自宅でアリのような虫を潰した覚えがあるという。外用軟膏を処方し、治療を開始した。

今回のドクター

ブイ・カイン・ズイ(Bui Khanh Duy)皮膚科医/ヴィンメック国際総合病院
①「ハネカクシ」ってどんな虫? ベトナムでは昨年、アオバアリガタハネカクシ(以下ハネカクシ)による接触性皮膚炎の患者が多く見られました。 ハネカクシは、体長7㎜の小型の昆虫で、頭部がアリに似て黒色、胸部・腹部が橙色、鞘翅が藍色、末端部が黒色という特徴的な色彩をしています。この昆虫を見かけたら、注意が必要です。 ②潰しては絶対ダメ! ハネカクシは体液中に「ペデリン」という猛毒を持っており、蚊やアリと同じ感覚で叩き潰すと大変です。体液が皮膚に付着し、あちこち触ることで広範囲に及ぶ皮膚炎が生じます。発症するまでに数時間かかるため、昆虫の体液が原因だと気が付かない場合も多いようです。 ③ミミズ腫れに似た線状発疹 体液が付着した部分には、顔や首などの露出部位に痒みを伴うミミズ腫れに似た線状の発疹ができ、次第に水ぶくれや膿疱の症状が痛みとともに現れます。まれに発熱、不快感、倦怠感、リンパ腺の腫れなどの症状も見られます。 帯状疱疹と間違いやすいので、アリに似た虫を潰したかどうかが診断の決め手になります。 ④完治までに約10日 初期はステロイド外用薬を、皮膚がただれていれば抗菌薬配合の外用薬を塗布します。症状が深刻であれば、ステロイド内服や注射などが必要になる場合も。適切な治療を行えば、10日間ほどで完治しますが、色素沈着が残ることもあります。 ⑤特徴的な外見を覚えて予防 特徴的な見た目を覚え、触らない・潰さないことが最大の予防。万一、体液が付着したら直ちに石鹸で洗い流し、付着範囲を広げないことが重要。特に目の周辺は注意が必要です。また、洗濯物の確認や窓を閉める、肌の露出を避けるなどして予防を心がけましょう。
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