伊藤忍のベトナムめし大全/第40回 タニシの肉詰生姜の葉風味蒸し/Ốc Nhồi Hấp Lá Gừng

タニシの肉詰生姜の葉風味蒸し/Ốc Nhồi Hấp Lá Gừng 殻はゴルフボールよりも少し大きいくらいなので、たっぷりと生地が詰まる。1つでもしっかりとした食べ応え 伊藤忍のベトナムめし大全冒頭からこんな話も何ですが、今回ご紹介する料理の日本語訳を「タニシ」としたのですが、実はこれ、本当のタニシとは別の種類のものです。リンゴガイの仲間で「タニシモドキ」と呼ばれる淡水の貝。ベトナム語では「オックニョイ/Oc Nhoi」や「オックブウ/Oc Buou」と言います。味や食感はサザエの様で、旨味がしっかり。北部でよく食べられ、中でも特に食べるのが楽しいのがこの「オックニョイハップラーグン/Oc Nhoi Hap La Gung」(Oc Nhoi=タニシモドキ、Hap=蒸す、La Gung=生姜の葉)です。 ちなみに、「オックニョイティット/Oc Nhoi Thit」と呼ばれることもありますが、この場合のニョイは「詰める」の意味で、「Oc=タニシモドキ(オックニョイの略)、Nhoi=詰める、Thit=肉」となり、「肉詰めのタニシモドキ」となります。 殻から外し細かく刻んだタニシモドキの身を、刻んだ生姜などの香味野菜、調味料と共に、絹挽きにしてよく練った豚のすり身に混ぜて生地を作ります。その生地を殻に詰めて蒸すのですが、ここで使うのが生姜の葉。詰め物をする際、まず殻に生姜の葉をかませ、その上に生地をのせてしっかりと生姜の葉ごと奥に詰め込んでいきます。殻の穴が生地で埋まると、その淵2ヶ所から緑色の葉が飛び出している状態となります。こうやって詰めることで、蒸した後に詰め物を殻から出しやすくするというわけです。 食べる時、飛び出している葉の両端を持って強く引っ張ると、スプーンや箸を使わなくても、蒸し上がった生地がゴロンと殻の外に飛び出します。加熱された生姜の葉はとても良い香りがし、詰め物といっしょに食べてしまってもいいのです。 また、生姜の葉がない季節や、生姜の葉を使わない地域では、変わりにレモングラスを使います。レモングラスは皮状の葉が重なってできているので、それを1枚ずつはがして生姜の葉の代わりに同じ様に使います。生姜の葉のように詰め物と一緒に食べることはできませんが、やはり加熱するととても良い香りがするのです。 さて、この取り出した詰め物は、ヌックマムベースの甘くて酸っぱいタレに付けて食べます。タレにも生姜がたっぷり入っていて、さらにはレモンの葉を盛り付けの際に散らしたり、タレに加えたりもします。生姜やレモンの葉の香りが、タニシの臭みを和らげてくれるのです。ふんわりと柔らかな豚のすり身の中に、時々コリっとしたタニシモドキの食感がし、ジワ~っと旨味が広がります。 この料理を初めて知った時は、「なるほど~」とすごく関心し、食べる時に生姜の葉をひょいっと引っ張って詰め物を出すのがとても楽しく、いくつもいくつも引っ張り出して食べたのを覚えています。香りも良いし、遊び心も効いていて、大満足の料理です。

タニシの肉詰生姜の葉風味蒸し/Ốc Nhồi Hấp Lá Gừng

殻の奥まで生地を詰めても、引っ張るだけで取り出せて、詰め物が残ってしまうこともない。こちらはレモングラス版
伊藤忍(ベトナム料理研究家) 2000年より約 4 年間のベトナム暮らしの後、帰国。現在、日本にてベトナム料理教室やベトナム料理店のメニュー開発、執筆を中心に活動。2011年7月に新作『ベトナム×ハノイ36通りグルメ』(情報センター出版局)を出版。詳しくはホームページ(www.vietnamfoodnet.com)を。
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