宮田 敬一さん
株式会社みちのくホスピタリティカンパニー代表
サンタクロースに扮し、孤児院にプレゼントを届けて10年。
「ボランティアは、無理せず続けていくことが大切」
「ベトナムで働いているということは、この国のお世話になっているということ。恩返しをしないと」。
オフィスやサービスアパートが入居するビル「Vタワー」の代表・宮田敬一さんが、サンタクロースとしてクリスマスに孤児院を訪問するようになったのは、そんな感謝の気持ちからだった。
初来越は2001年。「Vタワー」は当時、勤め先の「みちのく銀行」の融資先で、返済を進めるための出向だった。ビルの知名度を上げるため、パーティーやゴルフコンペなど様々な催しを企画。在留邦人の交流の場として「みちのくゆかりの会」も立ち上げた。
「自分が単身赴任だったので、ひとりでご飯を食べたくなかった、というのもあったんですけどね。会費制なんですが、皆さんにお返しするほどでもない額が毎回余り、年末には100US$ほどになったんです。そこで参加者の同意を得て、孤児院へお菓子を寄付しました。年末だったので、サンタクロースの格好をして」。
その頃のハノイでは、クリスマスがさほど普及しておらず、子どもたちの反応は薄かった。翌年も翌々年も同じように訪問したが、「年に1回、お菓子をくれるおじさん」という程度だったという。5年目は、例年より訪問時期が遅れた。すると孤児院から、サンタクロースが来ない、と子どもたちが心配しているという連絡が入った。
「待っててくれたんだと感激すると同時に、これはもう期待を裏切れないぞと、気の引き締まる思いでした。その年は、『渋滞がひどくて』と言い訳をしながら訪問しました」。
2006年に帰任したが、借入金の完済まで責任を持ちたいと銀行と交渉。再び同ビル代表となってクリスマスまでにハノイへ戻り、孤児院訪問も途切れることなく続けた。
「昔は遠巻きに見ていた子どもたちが、今では到着するなり抱きついてくる。受け入れられているのが伝わってきて嬉しいですね」。
近年はクリスマスが近付くと、子どもたちはサンタクロースに披露するための歌や朗読を練習し、手紙を書いて待っていてくれる。いつしか彼らにとって「宮田サンタクロース」は、年に1度やって来るお父さんのような存在となっていた。
「自分のことを想ってくれている人がいることを、子どもたちに知っていてほしいのです。無理をして大金を集めるのではなく、少ない額でも末永く続けることが大切だと考えています」。
10年目を迎える今年は、経営する日本料理店に招待する。ベトナム国立交響楽団と指揮者・本名徹次さんの協力を得て、生のオーケストラ演奏を聴く機会ももつという。
「ビルの募金箱にいただいた寄付やチャリティーゴルフの収益金などで、孤児院の増築も計画しています。働きながら大学へ進学したい子どもには、職も提供してあげたい。たいしたことはできませんが、1人でも2人でも、子どもたちが幸福になれる手助けをしていきたいです」。
宮田敬一 みやたけいいち
1957年秋田県生まれ。早稲田大学卒業後、「みちのく銀行」へ入行し、2001年にハノイの「Vタワー」へ出向。同年、「みちのくゆかりの会」などで集まったお金で、2ヶ所の孤児院への訪問を始めた。2009年に「株式会社みちのくホスピタリティカンパニー」を設立、ハノイ進出企業のサポートなども行う。日本料理店「おふくろ亭」のオーナーでもある。
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