2011.11.15

ベトナムの糧、天地の賜物/メコンにうまいコメあり。

ベトナムの糧、天地の賜物/メコンにうまいコメあり。
水と気候に恵まれているから、農民の仕事ぶりものんびりしている。 水牛にスキを引かせ、田植えさせすれば、あとは稲の方が勝手に実ってくれる。 それでもベトナム人は勤勉だから「コメを育てる」という。 同じ稲穂の国でも隣のカンボジアでは「コメが育つのを眺める」、 ラオスに行くと「コメが育つ音を聞く」だけで暮らしていけるそうだ。 (近藤紘一「サイゴンから来た妻と嫁」文集文庫 より) 撮影:Peter Stuckings 協力:アンジメックス・キトク社/ANGIMEX KITOKU Co.,Ltd. ベトナムの糧、天地の賜物 メコンにうまいコメあり。 PDF13.3MB 表示 / ダウンロード
ベトナム人は、大飯ぐらいだ。南部では朝からたっぷりのご飯で腹ごしらえをし、メコンデルタの女性はご飯の2、3杯はぺろりと平らげる。稲穂文化が社会を成し、風俗・文化を育み、「ご飯食べたか?」が日常の挨拶となる稲穂の国。全国一の生産高を誇るメコンデルタでコメを育て、米を食す人々は、やっぱりベトナムのコメが一番うまいと言って譲らない。

コメ作りにぴったりの気候風土 自然まかせから、大量生産へ

穂がつきはじめたばかりの青い稲田の向こうに、ずっしりと実った稲穂が黄金色の波を広げている。日本と比べるとなんとも不思議な光景だ。 ベトナム南部のメコンデルタは、この国を代表するコメの産地だ。年間平均気温が26〜27℃と一年を通して暖かく、寒暖の差がない。日射量もかなり多く。コメ作りには適した気候といえる。特にアンヤン(An Giang)省は、収穫高全国一を誇る米どころ。豊富な水と肥沃な大地がメコンの旨いコメを作るのだ、と農民達は口を揃える。 ここでいう「コメ」とは、日本でいう「外米」、つまり細長くて粘りが少ないインディカ米を指す。水田で育つ稲を水稲(すいとう)と言い、その中でも東南アジアでは「浮稲(うきいね)」が有名だ。水田が増水するのに従って茎が伸長し、水面上で穂をつける。雨期になると洪水が起きるメコン河周辺地域では、収穫まで半年以上を要するものの、手をかけずとも自ら伸び育ってくれる浮稲が適していたのだろう。 ベトナム戦争後、政府による灌漑整備が進み、それまで盛んだった浮稲栽培は、河の氾濫が大きいカンボジア国境地域を除いて徐々に衰退していった。コメ作りに適したこの地で、より効率の高いコメの生産が求められたためだ。 短期間で収穫できる他のインディカ米が主に栽培され、年に2回、3回と収穫できる稲作地帯へと成長した。今では輸出米の9割をメコンデルタ産が占めている。

巻頭特集・アンザン

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