塩川実さん/無農薬野菜生産・販売会社社長

バンメトートで無農薬農業に日々奮闘 「僕らは野菜を作ってるんやない、安心を作ってるんや!」

塩川実さん/無農薬野菜生産・販売会社社長 ベトナムの日本人こんがりと日焼けした肌に、笑うとこぼれる白い歯。屈託のない笑顔とやわらかな方言で親しみやすい印象の塩川実さん。弱冠28歳にして、中部高原バンメトートで、無農薬・無化学肥料の野菜を生産・販売する「ニコニコヤサイ」を経営している。 『ニコニコヤサイ』は、環境問題を考えたところから始まりました。僕は淡路島出身で、小さいときから山や野原が遊び場やったんです。自然と一緒に育ってきたから、おのずと環境について考えるようになったんやと思います」。 農業経験はなかったが、「自分でやってみる」ことから始めた。自ら鶏小屋を建て、農地を開拓し、月に1度はホーチミン市でニーズ調査と開業準備にいそしんだ。 「野菜に関する専門的な知識がないもんやから、植える間隔は野菜ごとに違う、とか、やってみて初めて分かることばかりでした」。 地道な努力を重ねた末、2011年に本格的に始動した「ニコニコヤサイ」。日本で農業研修を受けたベトナム人を中心に、9人で野菜作りに励んでいる。 「うちの会社は家族みたいで、僕はいつも『君らといると、毎日ほんまに楽しい!』いうてます。『シオの作った野菜を使って日本料理店やりたい』いう子もおって、うれしいですねえ。日々の中で苦手なこともでてきますけど、自分のやりたいことのためやから矛盾がないし、何よりできるだけ利益をあげて、みんなの給料を上げてやりたいですね」。 スタッフとの意識統一が、働く上で最も大切だと強調する。ある時、スタッフの1人に「せっかくまいた種をアリが運んでしまうから、農薬を使いたい。種の時点での使用ならいいのでは」と提案された。 「僕も、少しくらいなら使っても問題はないと思うんです。でも、僕らは『安心・安全な野菜』を作っている。だから1回でも使ってしまったら、信頼も安心感も失ってしまう。『僕らは野菜を作ってるんやない、安心を作ってるんや!』と」。 3ヶ月に1度、消費者と生産者の交流イベント「やさいの会」を開催している。 「直接お客さんの顔を見て、話して、触れ合う機会はとても大事だと、ひしひしと感じています。会を始めてからスタッフのやる気が変わったんです。感動して、お礼を言ってくる子もおるんです。生産と販売のバランスをとりながら、消費者の声に耳を傾けて、その声を現場にフィードバックしていきたいですね」。 人と自然に優しい産業の在り方を考え、無農薬野菜の栽培というひとつの答えにたどり着いた塩川さん。今後の抱負を語るその姿勢には、強い決意と明日への希望、そして自然と人への愛が満ち溢れている。
塩川 実 しおかわみのる 1983年兵庫県生まれ。2008年鳥取環境大学卒業。2011年1月、ダックラック(Dak Lak)省バンメトート(Buon Ma Thuot)で、無農薬野菜を生産・販売する「ニコニコヤサイ/NICO NICO YASAI」を創立。野菜の宅配サービスや定期イベント「やさいの会」主催など、安全・安心野菜を届けるため日々奮闘中。 http://circlink.blogspot.com